03
「そーいや千世、最近外出てる?」
「そと?」
うん。
ちょこちょこ散歩連れてってもらってたり、勝手に一人で好きに散歩したりしてるのは知ってる。
でもあの偽者騒動から、【黒猫】に固執してる誰かさんならもしかしたら色んな意味で【黒猫】に固執してる千世を見つけて捕まえちゃう可能性もある。
まあ、簡単に捕まんないのがうちの犬なんだけど。
「時々」
「なんか変わったことなかった?」
「ないよ?」
ううん、びみょうなトコだ。
基本的に千世の世界には俺しかいないし、必然的に視界には俺しか入らないし、それ以外が入ってたとしても認識してない。
散歩の意味あんのかって話だけど、千世は人より風景を見てる。
だから興味ないものは認識しないイコール覚えてない。
もし誰かさん達が行動を起こしていたとしても千世に認識されてない可能性も、なくはない。
【黒猫】の名前出したら話は変わって来るけど、まあ千世は俺に嘘をつかないし正直過ぎてビビるくらい正直だし。
ただし俺が、嘘をつけと言えば千世は他人に嘘を吐く。
しかも千世自身が嘘だと思ってないし、ただ俺が言えと言えばなんの疑念もなくそれを実行しちゃう素晴らしい犬だ。
とにかく。
ぶっちゃけ聞くヤツ間違えたってことだよな。
「そか、分かった。そんだけ」
そう言って、銀色の髪の毛をわしゃわしゃ撫で回せば心底嬉しそうに、気持ち良さそうに目を細める。
その表情と言ったら。
可愛いを通り越してるよ。可愛いを通り越したらなんになるかは知らないけど。
「夕ご飯どーしよっかー。何食べたい?」
「わふ」
いやいや、わふ、じゃわかんないし。可愛いけどわかんないし。
「寒くなってきたから暖かいもん食いたいねえ」
「食いたいねえ」
嬉しそうっつか楽しそうだな、千世。
もう夕方過ぎてるし、お腹も空腹を訴え始めちゃって。
何食べよう。冷蔵庫なにかあんのかな。あるか。
「煮込みうどんでも作りますか」
「作ります作ります!」
え、なに手伝うの?ノリなんだろうけどさ。
「よーし、じゃ手伝って」
「手伝う手伝う!」
え、なに繰り返すの好きなの?
可愛いけど、体格と合ってないよ。どうしたらそんなんなるの?
どうでもいい事をツッコミながらも、室内なのに手を繋いでキッチンへ向かう。
うっどん、うっどーん、なんて変な歌が横から聞こえたけど。可愛いから許す。
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