02
「むつきッ!」
「おーう」
三日会わないだけでそこまでするかってくらいの抱き着き。
相変わらず馬鹿高いマンションの一室。
てゆか最上階。
玄関を開ければ、待ってましたとばかりに飛び付いてくる大型犬。
「……睦月、おそかったね」
「歩いてきたのー。歩きたい気分だったから」
ズルズルと犬を引きずりながら、広いリビングへ。
ここで暮らす俺の犬ってリッチだよな。
不自由なんか何一つない。
いや、蓮さんの家も広いし俺も不自由してないけど。
唯一なにかあるとすれば、お互いに癒しがないというだけ。たったそれだけが、とてつもなくデカかったりするんだ。
「お茶、お茶のむ?」
「飲む飲むー」
よく出来た犬だよねー。お茶出し覚えたか。偉い偉い。
キッチンに向かった千世を横目に、お気に入りのソファーに脱力するみたく身を沈める。
言葉通りに身が沈むんだから凄いよ。
「千世ー」
「わん?」
ぱたぱたと足音が近付く。
湯呑みが乗ったお盆を持つ犬が視界に入る。犬が給仕て。
「明日午後からお墓参り行くから」
「おはかまいり?」
湯呑みをテーブルに置きつつ、おうむ返ししてくる千世にくすりと笑う。
首を傾げる犬が可愛いよ。
「そう。俺の母さんの」
「睦月の、おかあさん、」
ぽつり、ぽつり。
理解力は凄く早くて、知らない言葉を覚えるように繰り返す。
お墓参りには連れていったことなかったもんな。
「ちゃんとご挨拶するんだよ?」
「わん!」
よーしよし。
いい子いい子と、銀色の髪の毛をわしゃわしゃすれば本当に嬉しそうな顔をするこの犬がたまらなく可愛い。
「千鳥も行くけど」
「えー…」
ちょ、あからさまに嫌そうな顔すんな。
千鳥がいたら絞め技食らってんぞ。
素直なのは良いんだけどもさ。
来て数分なのにもう癒されてる。
ペットには癒し効果があるってよく聞くけど、あれってマジなんだね。
α波ってやつか。
とりあえず、はにかみ笑顔可愛い!
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