01
『墓参り?』
「うん、何年も顔出してなかったし、近いから久々に行こうかなって」
今現在、自室にて千鳥とお電話しながら出掛ける準備中。
つってもあんまり持っていくもんはないんだけど。
『犬の散歩ついでか?』
「まさか。お墓参りついでに散歩だよ」
なに言っちゃってんのー。
それは失礼だって。
俺が自分の血縁で唯一好きなのが母さんなんだから。犬の散歩ついでって、怒られるから。
『ふうん、何時から?』
「んー、わかんない」
『午後からなら俺も行くが』
「じゃあ午後で」
即答したら鼻で笑われた。
なんだよなんだよ、嬉しいくせにー。
「今からそっち行くけど、仕事何時まで?」
『10時過ぎる。犬には言っとく』
「はーい。───そんじゃ、お仕事頑張ってね!ダーリン!」
軽くリップ音を出してみたりして。
『あぁ、イイコで待ってろよハニー』
誰もが赤面するような甘ーい声を返されて電話は切れた。
「……相変わらずの甘さだ」
携帯を閉じて、呟いた。
自分から言ったくせに返されたら恥ずかしくなったんだけど。
蕩けそうな声だよ。電話でこれだもんな。目の前で直接言われたら、確実に顔が赤くなるって。
ドキドキしちゃうよ。マジで。
「っし、行きますか」
戸締まりチェックして、もう慣れた感じで部屋を出てエレベーターへ。
千鳥の家で待ち構えている愛犬の元に、またタックルされるんだろーなーなんて色々考えながら外に出た。
「んん、冬が近いな」
風が冷たくなってきたし。
11月だしなー。早いな。こんなもんか。
鍋囲んだりしたいよね。
そういうの好き。
気心が知れてるわけじゃないけど、親しい人達と鍋を囲むとか、どっか出掛けたりとか。
今度計画してみようかな。
とりあえず、俺と【黒猫】の両方に面識がある人達とかと鍋やりたいね。
凄いことになりそうだけど。
まったりのんびり歩きながら、今年の冬の計画を考えてみる。
千鳥の家までは徒歩で1時間くらい。
バスで行っても良いんだけど、なんとなく歩きたい気分だったりする。
そういう時もあるって。
歩くのは嫌いじゃないし。
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