20
諒くんが返ってから数分。
俺は今、何故か泉に詰め寄られていたりする。
「さっきの発言、気になった部分があんだけど」
「気のせいじゃない?」
にっこり。
笑いながら流そうとしてんだけど、さっきから同じ感じの質問ばっか。
なんか今日、やけに突っ掛かってくるね。そんな発言したのは俺ですけど何か。
「抱き着かれたりキスされたりとか、意味わかんねぇんだけど?」
「いやいや意味はそのまんまだし」
へらりとしながら言えば、なんと溜息が返ってきました。酷くない?
「誰にやられてんだよ」
「誰って、ハグは千春先輩とかチューは朔也先輩とか、」
つってもデコちゅーだけど。
口は蓮さんですけど。
「………」
「見た事あるくせに今更そんな事言わないでくんない?セクハラ?」
「……はぁ!?」
まったく、むっちゃん困っちゃーう。
いつからセクハラオヤジになったんだか。
嘘は言ってないよ?
ただ対象の人物が少ないだけであって。
泉は俺が先輩達からハグとかちゅーとかされてんのを間近じゃなくても見たことあるわけだし、何を勘違いしてんのか知らないけど今更誰だとか言われてもねぇ?
「そーゆーわけで。はい邪魔ー」
「……っ、」
「ねえ泉ちゃん、」
「…ぁ?」
ちゃん付けに突っ込まないんかい。
じゃなくて。
目の前の至近距離にいる泉を退かそうと肩に手をかけて横に軽く押した状態のまま、ぴたりと止まって泉を見る。
距離はかなり近い。
「……泉は俺を、誰と重ねてるわけ?」
「───…」
「俺は俺なんだから、他人と重ねて意味わかんない事言わないでよ」
俺の声色は普通。目線は泉。
誰を気にして、誰と重ねてんのかは言われなきゃ分からない。
例え予想出来たとしても、それはただの予想だから間違ったりもする。
「───それで変な妄想してたらマジで泉を変態って呼んでいい?」
「………んな!?…ッちげーよ!」
予想していない言葉だったのか、本気で焦ってるよこの子。
どーだかー、なんて言いながらそのまま泉を避けてカウンターの裏側へ。
レジ前でなんで詰め寄られなきゃなんねぇんだっつの。見られたらどーすんだ。
どうもしないけど。
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