18
「……真っ剣に悩んでるとこ申し訳ないんだけどさ、」
そう途切ると、きゅるきゅるした、いや間違えた。不安そうな目が俺を射抜く。
ご飯を求める子犬の眼差しってこんな感じなのかね。いや、大型犬なら身近にいるけど。
「俺からすりゃ変じゃないよ、それは」
「……へ?」
予想していなかったのか、諒くんの声が裏返った。
俺からすりゃ、なんだけど。
「つまり、諒くんはその瀬戸っていうクラスメートが好きなんだよ」
俺にはそんな感情はないんだけど。
「たぶんだけどね?」
恋愛感情なんて、俺には分からない。
でも愛情は知っているから。
唯一のダレカに対して抱く気持ちなんて俺には理解出来ないけど、でも多分、恋愛感情で好きなんだと思う。
「……す、き…?」
「そう。恋愛感情で好き。ラブ」
「…Likeじゃなくて?」
「ノンノン、Love」
ぽっかーんとしていてもなお、諒くんの発音が綺麗なのはスルーしといて。
真面目な顔で言い返せば、更に思考が停止したような顔になる。
「それにさ、フォローとかじゃないんだけど、俺からすれば異性同性とか別に関係ないと思うんだよね」
ぱっと意識が戻ったような目で、諒くんが見てくる。ちなみに泉も俺を見ている。
「だってさ、聞いてよ。俺の周りの人達なんて所構わず抱き着いてきたりキスしてきたりするんだよ?」
「ちょ、はぁ!?」
意外にも反応したのは泉だった。
なぜに。
キスか。キスに反応したのか。
されてますよ。もちろん口に。べろちゅーなんて慣れたもんだ。
「……キス?」
「そ。ちなみに俺は、人をひとりの人間としか思ってないから異性とか関係ないんだよね。周りもそうっぽいの」
類は友を呼んじゃうアレね。
「………ひとりの、人間…」
まるで初めての言葉を覚えるみたいに。
視線を下げて、確認するように声にする諒くんがなんか可愛い。
「だから、誰を好きになるのが良いとか悪いとか、そんなもん誰かが決められるような事じゃないっしょ? 好きになったら好きなんだから、堂々としてりゃいいの」
何言ってんのか自分でもわかんねーけど。
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