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「それ、その瀬戸ってヤツにも聞かれたんすよ。その屋上で」
「で?」
ギラギラすんなバカ泉!
物怖じしない諒くんも諒くんだけど!
「いや、瀬戸にも言ったんですけど、俺はチームにも入ってないし、不良なわけでもないです」
「まあ、確かに真面目だしねー」
「どうも」
泉はどうやら、諒くんに喧嘩を教えた誰かが気になってるっぽい。
聞くなって意味を込めて足踏んでやった。
「そっからなんすよね、瀬戸が纏わり付いてきたのが」
「気になってるんかね?」
「親友が言うには、俺の喧嘩の仕方が独特だからじゃないかって」
「へえー」
「姉妹校の先輩で、同じ甘いもの好きで、中学ん時から仲良くしてもらってるんです」
………姉妹校?甘いもの好き?
いや、いやー、ちがうでしょ。
甘いもの好き男子なんて結構いるし。うん。
何となくパッと出てきた存在を掻き消してみる。
南ヶ丘の姉妹校は東だ。いや、そんなんわかんないけどね。
「それから色々あって、今じゃよく話しするし家でメシ食ったりしてんすけど」
「つまり仲良くなったわけね。和解してよかったじゃん」
そう言えば、そうですね、って返ってきたけど、なんか表情が暗い。
「それからが問題で」
まあ、経緯を言わないとわけわかんなくなるからね。
「最近、俺、学校で気付いたら瀬戸の事見てたり、目で追ってたりしてて。瀬戸は俺の後ろの席で、親友が俺の前と右隣の席なんで俺いつも横向いて話してるんですけど」
「…………」
「…………」
思わず泉と顔を合わせてしまった。
諒くんは相変わらず視線をコップに向けてて気付いてない。
「なんつーか、気付いたら瀬戸の事考えてたり。あいつ、よく手を触ってきたり後ろから抱き着いてきたりするんですけど、その時すごいドキドキして」
「………」
「………」
諒くん、まさか気付いてない…?
「なんなんですかねこれ。男に対してこれって変?」
ぱっと顔を上げた諒くんのその表情は、なぜか泣きそうだった。
「……いや、」
「諒くん、」
泉が何か言いかけたところで割り込んでやった。
こいつが言うことは大抵良くないからダメダメ。
緊張してるっぽい、泣きそうな顔をしてる諒くんをじっと見つめて、口を開いた。
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