15
「つーかその人と俺、なにが似てんのさ」
「だーらわっかんねぇっつの。気にすんな忘れろ聞き流せ!」
「ナニソレ……」
「なんで話したのかすらわかんねぇんだよ、だから聞かなかった事にしとけ!」
「ハイハイ」
体ごと振り返って必死になってる泉に適当に返事してコーヒーを出し、ちょい落ち着け、なんて言ってやった。
お礼の一言を聞き、コーヒーを飲む。
ふむ。
ふむふむふむ。
そんなことあったなあ。
中学生でも美形でまだ可愛さの残ってた泉を思い出した。
今じゃもう、こんな悪人面になっちゃって。写真撮っとけばよかったかしら。
なーんて。
「…はー、マジなに言ってんだ俺。お前みたいなひ弱そうなヤツがアイツなわけねぇよなぁ……」
言いながらタオルを持ってテーブルを拭きに行った泉の背中を見る。
え、なに最後の。喧嘩売ってんの?
言い逃げかコラ。
悪かったなひ弱そうで。
今よりひ弱な俺に助けられたクセに!
ばーかばーか!
…って、なにムキになってんだ俺。
- ちりん
鈴の音がして見遣れば、そこには。
「───あ、いらっしゃい」
「どうも」
久しぶりな仁科諒くんが制服姿でご来店。なんか雰囲気が暗いぞ。
「どったの」
「いや、あのーちょっと…」
なになに、気になる。
諒くんがよく頼む紅茶を入れつつ首を傾げる。珍しいな。
「はい、どーぞ」
「ありがとうございます」
若干ほわっとした笑顔になって、マジ美味そうに飲むよこの子。
「ゆっくりでいーよ」
「ハイ……」
なにやらマジで悩んでるな。
なんかあったのか?
いつもならすぐさまケーキ頼むのに。
ちなみに試作だから基本無料で。え?特別特別。作り甲斐があるんだもん。
じっとコップを見つめる諒くんを見つめてる俺。泉は気にせず掃除してる。
あ、今日ケーキ残ってたな確か。
さっきのお客さんの分で余計に作っちゃったんだよなぁ。なんて考えてたら。
「あの、」
「うん?」
顔を上げて不安そうな表情の諒くんが、ゆっくり口を開いた。
「悩み事があって…相談したいんです」
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