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「やられたくせに、勝てんのかよって見下してたんだよ」
「……」



 見下されてたのか、俺。



「すっげぇ強かった。無傷で勝ちやがってよ、ソイツ」
「へぇ、凄いね」
「俺、その時アイツが言った言葉が忘れらんなくてさ」
「そんな印象強い事言われたの?」



 俺は、覚えてる。
 なんとなくだけどね。



「…いや、わけわかんねぇこと言われた」
「……はあ?」



 いや、うん。
 まあわかんねぇよな。


 ……新人さんに特別サービス。



「───…『…初めましての特別体験、二度目はないよ』って」
「……」
「な、わかんねぇだろ?」
「確かにね」



 よく覚えてますこと。
 あれは俺の気まぐれだからね。
 新人サンは特別に。たまたま見かけた時に限りだけど。

 それをやる意味?
 見返りなんか求めちゃいない。
 ただの俺の気まぐれ。ただの【黒猫】の気まぐれ。だからこそ、次見つけても助けない。ただ見てるだけってこと。



「そっからめちゃくちゃ喧嘩しまくって今みたくなっちまったんだけどな」
「へえ」



 アレを言った後すぐ起こす事もしないでそのまま立ち去ったから、あれから何があったのか詳しくは知らない。

 でも、蓮さんに拾われた事は後から聞いた。焔紀に。
 すげー血まみれだったけど放置する俺ってなんて冷たいんだろーねー。



「そっからちょっとしてからアイツの傍らに引っ付く犬みたいなヤツが現れたんだよ」
「犬?」



 言わずもがな千世ですよねわかります。



「なんか、イラッとした」
「……は?」



 どうやら俺は時々、思ったことがそのまま口に出るらしい。



「アイツが誰かと一緒にいる事すら珍しいのに、犬みてーなのは四六時中ひっついててさ」



 あー、うん。確かに。



「妙に雰囲気甘いし、いきなり現れてなんなんだって思ったんだよなぁ」
「……」



 え、なにそれ嫉妬ですか。
 嫉妬してたの?マジで?笑える。



「その犬みたいなヤツは、ソイツ以外に懐かねぇしな」



 ああ、コイツが溜まり場でじっと【黒猫】を見ている理由が分かった気がした。


 


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あきゅろす。
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