13
なにを探っているのかは分からない。
真意は掴めない。
だって俺はそこらへんにいる凡人だから。
「……そう、か」
「うん、なんで?」
言いながらもコーヒーメーカーでコーヒーを作る。
のどかわくよねー。
「そのチームにさ、【黒猫】ってヤツがいんだよ」
「ふうん」
カウンターに寄り掛かる泉は、もう顔を前に向けてるから表情は見えない。
「そいつすげぇ気まぐれなんだ」
「うん」
何がいいたいのかな、泉くん。
「…なんか、お前みたいなヤツだなって思った」
「へぇ、そーなんだ。確かに俺も気まぐれだけどさぁ、そこまで似てるの?その人」
「いや、わかんねぇけど…」
「なんだよそれー」
びっみょーう。
アレだな、身近にあるのに最後の最後に気付くタイプだなコイツ。
鋭いけど鈍いみたいな。
んん、自分で考えてて意味わかんなくなってきた。
「ま、……悪いな、気にすんな」
「別にいいけど、なんか思い入れでもあんの?」
泉にとって。
【狂犬】にとって、【黒猫】の存在がどういう意味を持つのかは分からないけど。
「……思い入れっつーか、多分向こうは覚えてねぇんだろうけど、」
意味ありげに途切れた声に、手元にあった視線を上げる。
「昔さ、チームに入ったばっかりの頃、俺、アイツに助けられたんだよ」
…───は?
「あん時、俺中学生でさぁ、身長低いし細いし、俺と同じ歳くらいか?とか思ったんだよな」
ま、てまてまてまて。
え、助けた?
確かに泉は【黒猫】が出てきた後に入ったっぽいけど。助けた?
「俺、初めて相手に負けた時だった。かなり上だったし体格も差があってよ、自分自身がその程度だったんだって、重い知らされてた」
店内の静かめのBGMが普通に聞こえる。
───あぁ、多分、そのあとに蓮さんに拾われたんだろう。
思い出した思い出した。
まだ【黒猫】が今くらい有名じゃなくて、【狂犬】の通り名すらなかった時。
あの時も今と変わらない服装で顔を隠してた時。
暇つぶしに散歩してた時。
路地裏で、喧嘩を見つけた。一人に対して、ガタイの良い三人か四人くらいだったかな。
やられたヤツが、見たことある顔だったから。暇潰しになりそうだったから。
俺は助けた覚えがないから、思い入れられる理由もないんだけど。
[*][#]
[戻る]
無料HPエムペ!