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 なにを探っているのかは分からない。
 真意は掴めない。
 だって俺はそこらへんにいる凡人だから。



「……そう、か」
「うん、なんで?」



 言いながらもコーヒーメーカーでコーヒーを作る。
 のどかわくよねー。



「そのチームにさ、【黒猫】ってヤツがいんだよ」
「ふうん」



 カウンターに寄り掛かる泉は、もう顔を前に向けてるから表情は見えない。



「そいつすげぇ気まぐれなんだ」
「うん」



 何がいいたいのかな、泉くん。



「…なんか、お前みたいなヤツだなって思った」
「へぇ、そーなんだ。確かに俺も気まぐれだけどさぁ、そこまで似てるの?その人」
「いや、わかんねぇけど…」
「なんだよそれー」



 びっみょーう。
 アレだな、身近にあるのに最後の最後に気付くタイプだなコイツ。
 鋭いけど鈍いみたいな。

 んん、自分で考えてて意味わかんなくなってきた。



「ま、……悪いな、気にすんな」
「別にいいけど、なんか思い入れでもあんの?」



 泉にとって。
 【狂犬】にとって、【黒猫】の存在がどういう意味を持つのかは分からないけど。



「……思い入れっつーか、多分向こうは覚えてねぇんだろうけど、」



 意味ありげに途切れた声に、手元にあった視線を上げる。



「昔さ、チームに入ったばっかりの頃、俺、アイツに助けられたんだよ」



 …───は?



「あん時、俺中学生でさぁ、身長低いし細いし、俺と同じ歳くらいか?とか思ったんだよな」



 ま、てまてまてまて。
 え、助けた?
 確かに泉は【黒猫】が出てきた後に入ったっぽいけど。助けた?



「俺、初めて相手に負けた時だった。かなり上だったし体格も差があってよ、自分自身がその程度だったんだって、重い知らされてた」



 店内の静かめのBGMが普通に聞こえる。



 ───あぁ、多分、そのあとに蓮さんに拾われたんだろう。
 思い出した思い出した。
 まだ【黒猫】が今くらい有名じゃなくて、【狂犬】の通り名すらなかった時。

 あの時も今と変わらない服装で顔を隠してた時。
 暇つぶしに散歩してた時。
 路地裏で、喧嘩を見つけた。一人に対して、ガタイの良い三人か四人くらいだったかな。
 やられたヤツが、見たことある顔だったから。暇潰しになりそうだったから。

 俺は助けた覚えがないから、思い入れられる理由もないんだけど。


 


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