12
「ありがとうございましたー」
お会計を終えて、手を振って帰っていくお客さんに手を振りかえしちゃったりして。
皿を下げてきた泉と目が合う。
なんか気まずそうな顔してるんだけど。
「…で?さっき何言おうとしたの」
「、…あぁ」
綺麗に食べてくれたっぽい皿を洗いながらも聞いてみた。
「───前に、その、誘拐された後さ」
「……」
ぼんやりと思い出してみる。
「社と神威、二人と顔見知りだって言っただろ?」
「……」
泉はカウンターに寄り掛かって、俺に背を向けている。その表情は分からない。
「小っせぇ頃から仲良くしてもらってる近所のお兄さん、ってさ」
うん。
ひとつ言わせて。
なんでそんな細かく覚えてんの?そこにびっくりだよ俺は。
「千鳥さんのこと?」
「……」
さて。どう答えようかな。
なんて。
「いや、違うよ」
確かにかなりお世話になってるし、小さい頃から仲良くしてくれてる人ってのは間違いないけど。
あの時俺、一人だなんて言ってないぜ。
「……は?」
「え、だから、違うよ」
ばっと振り返った泉を見る。
なにをそんな驚いてんの?
「そのオニイサンの名前、天王焔紀って言うんだよね」
「───え」
「焔紀の知り合いが千鳥なの。だから千鳥とも仲良しだよ?」
「……」
こてん、と首を傾げる。
泉はかなり目を見開いてるよ。
固まったよ。硬直硬直。おーい。
「ん?そーいや焔紀のチームの総長に千鳥をあてたって言ってたなー」
「………お前は、」
「うん?」
なぜか険しい顔をしている泉。
なにかな?
「お前は、チームに関わってねぇのか?」
「……」
何かを探るような、目。
ふむ。
「───俺は、関わってないよ」
にっこりと。
嘘じゃない。
時任睦月はチーム『tutelary』に関わりがない。
ただチームメンバーと個人的に関わりがあるだけ。『tutelary』と関わっているのは【黒猫】なんだからさ。
千世?千世は関わってるよ、もちろん。
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