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「ありがとうございましたー」



 お会計を終えて、手を振って帰っていくお客さんに手を振りかえしちゃったりして。

 皿を下げてきた泉と目が合う。
 なんか気まずそうな顔してるんだけど。



「…で?さっき何言おうとしたの」
「、…あぁ」



 綺麗に食べてくれたっぽい皿を洗いながらも聞いてみた。



「───前に、その、誘拐された後さ」
「……」



 ぼんやりと思い出してみる。



「社と神威、二人と顔見知りだって言っただろ?」
「……」



 泉はカウンターに寄り掛かって、俺に背を向けている。その表情は分からない。



「小っせぇ頃から仲良くしてもらってる近所のお兄さん、ってさ」


 うん。

 ひとつ言わせて。
 なんでそんな細かく覚えてんの?そこにびっくりだよ俺は。



「千鳥さんのこと?」
「……」



 さて。どう答えようかな。
 なんて。



「いや、違うよ」



 確かにかなりお世話になってるし、小さい頃から仲良くしてくれてる人ってのは間違いないけど。
 あの時俺、一人だなんて言ってないぜ。



「……は?」
「え、だから、違うよ」



 ばっと振り返った泉を見る。
 なにをそんな驚いてんの?



「そのオニイサンの名前、天王焔紀って言うんだよね」
「───え」
「焔紀の知り合いが千鳥なの。だから千鳥とも仲良しだよ?」
「……」



 こてん、と首を傾げる。
 泉はかなり目を見開いてるよ。
 固まったよ。硬直硬直。おーい。



「ん?そーいや焔紀のチームの総長に千鳥をあてたって言ってたなー」
「………お前は、」
「うん?」



 なぜか険しい顔をしている泉。
 なにかな?



「お前は、チームに関わってねぇのか?」
「……」



 何かを探るような、目。
 ふむ。



「───俺は、関わってないよ」



 にっこりと。

 嘘じゃない。
 時任睦月はチーム『tutelary』に関わりがない。
 ただチームメンバーと個人的に関わりがあるだけ。『tutelary』と関わっているのは【黒猫】なんだからさ。
 千世?千世は関わってるよ、もちろん。



 


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