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「わぁ!かわいいっ」
「……すっげぇ」
「これ、喫茶店のケーキ?専門店とかで売ってそう!」



 おうおう、嬉しいねえ。

 キッチンから賑わいを聞きつつ、下げられた皿を洗う。
 盆を持ってカウンター前で突っ立ってる泉は、なんだかぼんやりしてる。


 なにを気にしてるのか。
 チーム関係で何かあったのか。
 それとも【黒猫】のことか。

 んん、わっかんね。



「……なぁ」
「なーに」



 ぽつり。

 お客さんに聞こえない声で、泉が呼び掛けるから顔を上げずに応えた。



「……」



 だんまりかーい。
 言葉で言ってもらわなきゃわかんないんだけど。
 心が読めるとか、そんな超能力的なもん持ってないんですけどー。



「……どうしたの」



 洗い物を終えて、顔を上げるとそこには泉の後ろ姿。
 つっても斜め前だけど。



「……お前、朝比奈千鳥さん、と知り合いってマジ?」



 おっとぉー。
 ある意味ド直球だなオイ。
 でもま。



「うん?そうだけど」



 俺は普通に答えるぜ。
 だって嘘じゃないし。
 ぶっちゃけマジでなにが聞きたいんだ?



「あれ、泉知ってるの?」



 泉が振り向かない事をいいことに、隠すことなく薄ら笑いを浮かべる。
 視界には、後ろ姿の泉と、賑やかなお客さん。



「俺がチームに入ってんのは知ってるよな」
「うん。巻き添え食らったし」
「………わりぃ」
「いや別に気にしてないし」



 うんうん、マジで気にしてないし。
 だってどうなったって確実に助かると思うから。優秀な愛犬がいるもので。



「そのチームの総長が千鳥さんなんだよ」
「……え、マジで?」



 知ってるけど?
 なんて言いませんよ。



「お前、前に───」



 深刻そうな顔をしてた。
 分かったのは、振り向いたからだ。
 とっさに笑みを引っ込めた。



「すみませーん、お勘定お願いしまーす」
「!」
「…っあ、はーい」



 タイミングが悪いのかなんなのか。
 まあ、デザートなんてそんなもんだ。
 溜めが長い泉が悪い。
 うんうん。



 


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