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「ここの従業員って、みんな美形だったりする!?」
「突っ込みすぎだから。引いてるから」
「うっさい!聞いてるだけ!」
「……まぁ、俺よりは、かなり」
「またまたー。キミもカッコイイって!高校生に見えない!」
「……どうも」
「………」
ヤッベ、笑いそう。
戸惑う泉と突っ込んでくる女性客。
うちの長は比じゃないくらいアレだから、見たら卒倒すんじゃね?
前にそんな事があったな。
大抵は言葉が出ないとかだけど。とりあえずそのまま引きこもっててね、蓮さん!
なんて考えつつ、ぱっぱとメインを作り上げ、イライラしてそうな泉を呼ぶ。
「……もーヤダ」
「まあまあ」
げっそり、ってこういうのを言うのか。
この数十分で随分と頬がコケたな、泉。
テーブルに持っていく泉の後ろ姿を見て、一息ついたらデザート作ろーかなー、なんて思ったり。
まあ、そんな凝ったヤツじゃない比較的簡単なデザートだから、ゆっくりでいいんだけど。
そこでふと考えるのが、自分のこと。
移住するとか言っても今すぐじゃないし、話しなきゃなんないし。
もしかしたらココを辞める事になるかもしれない。
ぶっちゃけ、ここで働いてた理由って家が嫌だったわけで。その嫌なものがない今、働こうが辞めようがどっちでも変わらない。
楽しいっちゃ楽しい。
千鳥には暫く引きこもりしてろって言われてるけど。
癒されるけど外には出たいぜ、俺も。
例え移住してもしばらくは働き続けてるんだろうけど。千世の事は、まあ、どうにでもなるし。
考えなきゃなんないのは分かってんだけど、なんか怠いんだよなぁ。
バテてんのかな。
ちゃんと寝てないからか?
あの夢がずっと続いてるから?
「……はー…」
なんだろ。本当嫌な気分になるよ。
近々母さんのお墓参りでも行こうかな。
千世連れて、散歩もついでに。近いし。
よし、そうと決まれば後で千鳥にメール入れとこーっと。
「……さて」
デザート作りますかー。
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