09
「すみませーん」
「ぁ、ハイ」
注文の合図を受け、聞きに行くのはもちろん泉だ。
片言なのはスルーしてもらって。
とりあえずここ最近の泉の様子に変化は見られないが、やっぱそのうちバレるわけで。
同じチームにいるし、時々会ってるわけだし。
バレたらバレたで良いんだけど、確実に質問攻めとかされる気がする。それがめんどいだけなんだよなぁ。
バレた時の表情が見てみたいな、なんて思ったりしたりして。
まぁ、今悩むべき所は。
「───オイ、ぼけっとすんな」
「ぅあはいッ!」
「………」
ちょ、なにその顔。
「ご注文はなんでしょうか、ウエイター」
「ぁ?……あぁ、コレ」
「…ん、りょーかい」
伝票を受け取り、注文チェック。
このメニューならさくさく出来ちゃうな。
うし、と心中で気合い入れて、ぱっと顔を上げたら泉とばっちり目が合った。
いやコイツ、まさかずっと見てた…?
あ、真面目な顔に見惚れちゃったとかー。
……ないないないアリエナイ。
「なにさ」
首を傾げつつも聞くと、ハッと我に返ったような表情になった泉ちゃん。
なんだなんだ、どうした。
「……いや、べつに」
ぱっと顔をそらし、自らお客さんに捕まりに…じゃなくてお冷やを出しに行った泉。
……。
こりゃあ、そう時間かからんかな、こっちも。
ひとまずソレは置いといて。
パスタ系ならすぐ出来ちゃうな。
予め聞いているデザートをゆっくり作れちゃうかも。
「おにーさんいくつー?」
「彼女いるのー?」
「お前、彼氏いるだろ」
「それはそれ。これはこれ」
「……」
見事に捕まってくれている泉。
さすが。美形は大切にすべきだ。
「ねぇねぇ、あの子は?」
「………、さぁ…、」
……。
何だろう、この感じ。
ちらほら会話が聞こえちゃってんだけど、平凡を地で行く俺が誰かの目に止まる事が違和感。
いやいや、フィルターかかっちゃってる誰かさん達は別として。
なんやかんや考えつつ、沸騰したお湯の中に、塩と乾パスタを投入。
その間にソース作り。
つか全員パスタて。イタリアン好きなの?
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