06
「ところでお兄様」
「なんだ」
ぐりぐりわしゃわしゃされてボサボサであろう髪の毛を、なぜか懸命に治そうとしてる千世を傍らに聞いてみた。
ちょいと気になってはいたんだよ。
「あれから、なんか動きある?」
そうそう。
白猫の件から一週間ちょい経ったけど俺への直接的な動きがない。あれだけ言っておいて何もないなんて思えない。
「いや、ねーよ」
「ふうん」
嵐の前の静けさ、とかなんとか言うけれど。
すぐにじゃなくても動くと思ってた。アキラは手段選ばないみたいだし。あの時会って、ちょっと雰囲気変わってたからわかんないけど。
「あったとしても、お前に近付けねぇだけだ」
「え、なんで?」
「少しでも動きがありゃ、見張るように言ってあるから」
「え、誰に?」
「関係者全員」
あっけらかんと言ったけどさ、オニイサマ。関係者全員って、傘下含むチーム全体ですか?
今や全国トップに君臨する『tutelary』の、その傘下の数は増える一方だ。
ここらへんで活動するチームの九割は、『tutelary』の傘下と言っても間違いじゃない。
『tutelary』の関係者なのか、はたまた【黒猫】の関係者なのかは分からない。
でもニュアンス的に『tutelary』の関係者と思われる。
四六時中見張るなんて事はしないが、明やその関係者が動けば『tutelary』は動く。
そう思うと【黒猫】の名がどれだけの存在感を持っているのか不思議だ。【黒猫】ってか、たぶん千鳥と焔紀が言えば動くような関係性なんだけどさ。
てことは、あんま気にしなくていいっぽいな。つまんないけど。
俺が言えば止めるだろうけど。
愛されてんね、びっくりだよ。
「嫌か?」
「ん?見張りのこと?」
そんな顔してたのか。
「千鳥は俺の性格分かってるもんね」
にっこり。
あいつらに見張りをつけたとしても、派手に動けなくなっているとしても。
面白くしたいと思えば、俺は個人的に動く人間だから。
それを千鳥は分かってると思ってる。
だってほら、素敵に妖しい笑顔だもん、千鳥。
[*][#]
[戻る]
無料HPエムペ!