12
「あぁー腹減りぃぃ」
「けー坊」
「ちょー場違い」
しゃがみ込んだ慧を笑う双子は慧の横にいる。
その三人の周辺には、うめき声や気絶している二十人以上が倒れていた。
「つまんねぇ」
溜息を吐き出したのは翔太郎で、木箱に寄り掛かりあくびまでしている。
五人全員かすり傷も汚れすらもない。
争いはものの数分で決着が付けられた。
「ファミレス寄ってこーよー」
「「けー坊の奢りだって!」」
「ちょ、…えぇ!?」
「それならお言葉に甘えて」
「がっつりいくかぁ」
「ちょ…っ、決定なの!?それ決定なの!?」
無論言い出したのは慧である。
それゆえ奢るのは当たり前だと各自散々言いながら四人は歩き出して、その後ろを十数分前に倉庫に来た時と変わらない桃色の髪を揺らしながら慧が追い掛けていく。
騒ぎ声が遠ざかる中、気絶せずに保っていたが今なお痛む体を少し起こしたアキラは呆然と倉庫の出入口を見ていた。
「………なん、だよ…、アイツら…」
終始ふざけていた五人。
『RAIN』というチームの総長が、一番ふざけていた桃色の髪の奴だと知っていたにも関わらず、何故か副総長である誠が総長のような気がしてならない。
あの甘い匂いと甘い髪色と、ふざけた行動。
一番甘く見えて、一番危ない奴だとアキラは脳裏に焼き付けた。
そして『RAIN』が【黒猫】の居場所を知っている、ということも確信していた。
アキラは【黒猫】を諦めてはいなかった。なんともしつこい男である。
「……【黒猫】、」
そう呟いて、身体をコンクリートに寝かせてアキラは目を閉じた。
「……ッくしゅ…っ!」
あー…久しぶりにくしゃみした。
なんか悪寒までする。まさか風邪?
もしかして誰か俺の噂話でもしてるとか…!
……いやない。ないな。
なんて思ってたら、パコッと頭に衝撃。
見れば盆を持った蓮さんが。
「風邪菌飛ばすんじゃねェぞ」
「んじゃ、移してあげましょうか」
「ほォ、いい度胸だ」
「……いや、冗談デス」
冗談ですから、ニヤつきながらにじり寄るのやめて下さい…!
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