08
駅前大通りのざわめきから離れた、静かな錆びれた倉庫が立ち並ぶ場所。
そのひとつの倉庫の前に数台の大型バイクが無造作に停められ、中からは話し声や笑い声。
「マジで来んのかね」
「ビビってたりしてなぁ」
ギャハハ、と下品な笑い声が響く。
彼等は待っていた。
挑戦状をたたき付けたのは自分らのチームからであり、そして相手は『RAIN』である。
挑戦状、といっても紙を渡した訳ではなく『RAIN』のチームにいる高校生を二人、卑怯にも数十人でリンチしてその傷だらけの姿を挑戦状としたのである。
『RAIN』は少人数小規模、一人一人が洗練されていて更に幹部である三人に加え総長と副総長合わせた五人はかなりの美形、という噂を聞いていた。
彼等は聞いていなかった。
チームに属する誰もが知っている関東地区トップに君臨するチーム『tutelary』の傘下に加わる数多のチーム内トップ、実質二番目が『RAIN』だと。
二番目にいてその噂が入らないのは彼等が馬鹿だからではなく、『RAIN』が傘下にいるという噂が出回っていないという所が問題である。
たかが数十人のチームで、しかも来るのがたった五人。
いくら総長に加え副総長や幹部であったとしても、こっちの人数が多ければそれだけ相手が不利になるのだと。
そう、彼等は高を括っていた。
「きったねー」
「彼等くらいのチームなら妥当な場所でしょう」
「騒いでも文句言われねぇしなぁ」
上から、慧、誠、翔太郎である。
立ち止まった目の前には、連なる錆びれた倉庫。
「「明日テストだねぇ」」
場違いな発言をした双子。
いや、場違いな雰囲気を持っているのは五人全員である。
カラコロと飴玉を転がしながら、慧は制服のズボンのポケットに両手を突っ込んだ状態のまま怠そうに息を吐いた。
「ま、俺の可愛い後輩をフルボッコしちゃったお返しはちゃんとしてあげなきゃねぇ。…ついでも含めて」
先日病院に運ばれた後輩二人の見舞いに行った時だった。
包帯だらけにされた状態でその時の状況や会話、伝言を悔しそうな顔で言っていた後輩がいて。
「すんません、なんて今から会う奴が言う言葉だっつーの」
『RAIN』の総長である慧は、仲間を大切にする人間である。
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