06
甘やかしてんのは自覚してるけど、千世は俺の犬だから。
癒されてんだから、癒してやんないと。
「むっちゃん、今度いつ店行くのー?」
「なに、来んの?今まで集会の時以外顔出さなかったくせに」
そんなことないよー、なんてへらへらした顔してる慧。
元々『RAIN』のチームメンバーは少人数小規模だけど、その代わりに一人一人が洗練されてて強い。
幹部である慧の幼なじみ四人も当たり前だけど、おちゃらけてる慧は総長やってるくらいだから論外か。
強さとかはわかんないけど。
慧の性格かもしんないけど『RAIN』はむやみやたらに喧嘩はしないし、売られたら買うだけっていうその規則が『tutelary』の当時総長だった焔紀に買われて許可が下りたらしい。
『tutelary』の傘下につくのを希望した理由は、たまたま集会の時に俺が焔紀について行ったら慧が一目惚れしたからなんだとか。
焔紀から聞いた。
当時顔も鼻の下からしか見えてなくて全身真っ黒黒助な格好なのにも関わらず、雰囲気にやられたらしい。
雰囲気て。
今じゃ素を知ってるけども。
【黒猫】の時はそれなりな雰囲気出してたりはしたけど、ぶっちゃけそんな喋らない無口突き通してたんだけどね。
「むっちゃーん?むーつーきーくーん」
「───あ」
いっけね、飛んでた。
「「むーちゃん、それ癖だよね」」
「うん?」
とりあえず、店に行くかは気まぐれだってことにして適当に返しといた。
だってホントだもん。
「ちょーてきとー」
「さっすがニャンコ」
「そこ、うるさい」
双子が左右に首を傾げてにんまり。
悪戯っ子め。
「まあ、今日はこのへんで失礼しましょう」
「バ会長、仕事だぞ」
「えー」
仕事って学校のかな。
立ち上がった誠が、カウンターにへばり付く慧の服の襟首を持って引っ張ってる。
「じゃーにー、」
「むっちゃん」
「またな」
「今度は二人っきりで会いましょうね」
「ぬーけーがーけー! むっちゃぁあぁん」
上から、都、帝、翔太郎、誠、慧。
ちりん、と扉の鈴が鳴って。
ぽっかーんとしつつも手を振って、扉が閉まるまで手をあげっぱにしてた。
「……嵐だ」
なんだこれ。
なにこの感じ。あの人ら何しに来たの、まじで。
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