05
「そういえばむーちゃん」
「バカに拉致られたってホント?」
食い下がる慧をスルーして、双子が同時に俺を見る。
え、なにその話。
どっから拾ったの。
「「バレた?」」
「怪我とかはなかったんですか?」
「お前ってどっか抜けてるよな」
「むっちゃんをバカにすんなよ翔ちゃん!」
「一気に喋んないで!」
聞き取れん!
特に翔太郎と慧!
「確かに拉致られたけど、拉致ってほどじゃねぇよ。…バレてもない」
ふう、と溜息。
アレを拉致って呼ぶなら、実行犯の一人と親しく喋らないっしょ。
穏やかだったから。むしろ気持ち良いくらい穏やかだったから。
「ふうん、」
「なあんだ」
「双子の事だから、どうせ詳しく知ってんだろ?」
「「まーねー」」
悪戯っ子な同じ顔で笑う双子。
わざと言ったな。しかもほかの奴に言ってないんかい。
「都、帝、あとでじっくり聞かせてもらいます」
「「まーくん怖ーい」」
いや怖がってるように見えませんけど。
にっこり笑ってる誠の背後が黒いんですけど。
なにされんの。むしろなにかすんの、誠。
「復帰したのか?」
冷めてるであろうコーヒーカップに入った黒い液体を見ながら、翔太郎が俺にだけ聞こえる声で呟いた。
四人には聞こえるんだろうけど。
さすが。
ちゃんと状況分かってるから、こうしてさりげなく声のトーンを下げる。不自然に静まり返らない辺り、ホントよくやってくれるよね。
「さあ、どうだろうね」
「猫は気まぐれか」
「コーヒーおかわりする?」
「ああ、頼む」
にやりと笑う翔太郎。
慧も誠も都も帝も笑ってる。
俺の性格をある程度理解しているからこその笑顔。
「まあ、千世も相変わらずだし」
「まだ二代目のところに?」
頬杖をついてる姿も優雅だね、誠。
爽やかな優しい笑顔は、世の中の女性をメロメロに出来ますよ。
「休みの日に会いに行ってる」
「二年会ってなかったんだろ?」
二年はデカかった。
べったり深いよ。
「甘やかし過ぎなんですよ」
「千鳥にも言われた」
思わず言いながら苦笑い。
煎れたてのコーヒーを五人分の新しいカップに追加して、ソーサーにあるカップと取り替れば各自お礼を述べる。
さすが礼儀がなってるね。
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