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 泉の洞察力は普通より上だからね。
 大抵あのチームにいる幹部達は並外れてるけども。



「穏やかには見えねぇな」
「いや、これは…」
「泉様の為に、」
「こいつ泉様の周りをウロウロしてて…っ、…それで、」



 泉の親衛隊らしい三人がおどおどしながら、身振り手振りで言い訳。
 噂を知らないわけない。親衛隊っていうなら泉が【狂犬】の通り名を持つ有名な人間だって。

 キレたら確かに手がつけられないけど、根は優しいんだよ。



「頼んでねぇし、お前らみたいな奴の存在も認めねぇっつったろ」



 雰囲気が【狂犬】だよ、泉。
 目付きが怖い怖い。
 その威圧に押されて、動けないでいる三人と五人。美少女生徒はへたりこんでた。



「失せろ。二度とすんじゃねぇよ。次見つけたら風紀に叩き出す」
「……ッあ、はい!」



 一人の返事を合図にしたみたいに、俺のいる場所とは反対の泉が来た方に走り去っていく、計八人。
 ちなみに被害生徒は未だに立ってない。そこに泉が近づく。



「大丈夫か?吉野」
「あ…、ありがとう、ございます…」



 やっさしーい。
 手を掴んで立ち上がらせてもらった生徒吉野くん。
 あれだね、よくあるんだろうね。ああいう親衛隊なんてマジでいるんだ。

 風紀ってそんな怖いのかな。
 聞いた瞬間の表情の強張りが凄かったんだもん、ちょっと気になる。



「正義のヒーローは来たのか?」
「正義のヒーローって。いや来たけどさ」



 少し顔を出してたのを引っ込めて振り返れば、校舎の壁に寄り掛かって腕を組んでる千鳥。
 ちなみに千世は俺と一緒に覗いてた。
 俺が覗いたからだと思うけど。
 だって千世が興味持つのは俺だけだし。まねっこにハマったのか、可愛いやつだ。



「文化祭なのに」
「だからだろ」



 ま、興味ないけど。
 そーいや泉、制服じゃなかった。
 髪の毛がいつものポニーテールじゃなくてなんか綺麗にセットされてて、あれはまるで。



「泉のクラス、ホストかな」
「……ぶっ」



 なんとなく呟いたら、千鳥が吹いた。
 そんな意外だったのか。似合ってたよスーツ。
 千鳥は頻繁に着てるから違和感ないけど、泉はちょっと違和感あった。



「見に行くか」
「楽しんでるよね、千鳥」



 笑ってんもんね、堪えてないもんね。
 んじゃあ、行きますか。


 


[*][#]

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あきゅろす。
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