04
そういえば、とほったらかしにしてた携帯をポケットから取り出すとチカチカと光っていて。
確認したら、新着メール一件、の表示が出ていて開けば店長からだった。
───話があるから事が落ち着いたら連絡。強制。
絵文字も顔文字もない文面が飛び込んできて、思わず苦笑。
強制って。……クビ、とか。
ふと過ぎった、クビという言葉。
今あの場所を失ったら、俺は居場所をなくす。
かちかちと文字を打ち込んでいく。
…了解しました。っと。
不安で聞けない。
店長の事を考えたら、言われそうな言葉じゃないんだけど、なんか不安だ。
メールはすぐに返ってきて、どくりと鼓動が大きくなる。同時になぜか、うとうとしてきた。珍しいな、疲れてんのかな。
なんて思いながらメールを開けば。
───なんかくだらねえ事悩んでんじゃねェだろうな。いいから連絡しろよ
その文面に、じんわりと心が包み込まれた気がして口元がゆるむ。素早く珍しい若干の眠気と戦いながら打ち返す。
よろこんで!店長あいしてるっ、はぁと。
……よし。
絵文字も顔文字もない薄い文面。
思わずそんな言葉を返してしまったけど、送ってしまったもんは仕方ない。
店長から返事が来る前に携帯を握ったまま、俺は眠りの世界にダイブした。
*
───自然に目が覚めた。
仮眠室の外、応接室から微かに人の会話が聞こえる。携帯で時間を確認すると8時だった。
いま8時に運命感じたのは気のせいじゃない。
画面には、新着メール三件の表示。
開けば、メルマガ二件と昨日のメールした時間で店長からの返信が一件。
───知ってる。とりあえずちゃんと睡眠とれよ。おやすみ。
なんだか朝からいい気分になる。
朝からこんな気持ちになるなんて、最後いつだ。…まあいいや。
つか知ってるって。知ってるんだ。それはそれでびっくり。
携帯を閉じて毛布を畳んで置き、昨日の残ったお茶を飲んで口を潤してからコップを持って仮眠室を出たら。
「おはよう、眠れたか?」
「え、お、おはようございます」
「あ、はい、まあ眠れました。おはようございます」
目の前に清水さんと新人山田くんの姿が。
朝から吃る新人山田くんがちょっと気になったが、まあいいか。
新しいお茶を貰い、ソファーに座る。
向かいに座った清水さんは、タバコをくわえて昨日と違う缶コーヒーを片手に俺を見る。
「朝早く悪いが、これからまた現場検証する為に一緒に来てもらうよ」
その言葉に、ああ昨日そういえば、なんて思っても口にはしないけど。
なんとなく思い出して頷き、清水さんの傍らにいた新人山田を見ると何故か目を逸らされた。
なんかしたかな。
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