[携帯モード] [URL送信]

短編集(~2019)
04
 


 いつからそこにいたのか、なにをされたのか、なにをしたのか。
 分からない事しかない。
 綺麗な顔をしたそいつの、本来綺麗な顔に今は血が滲んで痣が出来てる。
 なのに綺麗な顔なのは、もう驚かない。


「生きてるかー、おーい」
「……っ、ん、」


 耳元で問い掛けたら、目は閉じたまま、顔を歪ませて軽く身をよじらせたそいつ。
 色素の薄い髪の毛が、ぱらりとまた顔を隠して。

 俺はそいつの冷えた頬に手を伸ばして。


「おーきーろー、」
「…ぅあっ、い、いたい!」


 思い切り抓ってみたら。
 目は閉じたまま、そいつの手が痛みを無くそうと俺の手首を掴んだ。
 細長い、綺麗な手が、意外にも力強くて、俺はぱっと手を離してしまった。


「………」
「………」


 倒れるそいつを見つめる俺。
 目を開いて俺を見つめるそいつ。

 髪の毛と同じ、色素の薄い、瞳。
 一瞬、吸い込まれるような錯覚を覚えて視線を逸らそうとしても、逸らせないまま固まる俺。


「………だれ」


 素の声と、感情のない顔が、ぞくりと背中を粟立たせた。



---------
のされた数人の不良の存在はもはやスルー。
のされた数人の不良はのされたまま何も出来ずにただ悩む。

[←][→]

9/205ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!