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短編集(~2019)
03
 


「部屋着姿も相変わらずかわいいいい」
「く…っ、抱き着くな!誰が許可したっ」
「俺!」
「死ねッ」
「やーだよ」


 ベッドに乗り上がって勝手に抱き着いて来るメイを振りほどきたくて、押し戻して突き飛ばそうにも全然離れない。
 無駄に力強いんだよコイツ、畜生。
 ヘタレの癖にたまに男らしくなるから、凄く扱いづらい。
 扱い易い時と扱いづらい時の差が凄まじい。


「なあ、ユズ」
「……なんだよ、」
「好きだよユズ、ちょー好き」
「………」
「こっち向いて、ユズ」


 抱き着かれた勢いで倒れ、馬乗り状態のメイの顔と距離がかなり近い。
 顔を背けて口元に腕を通して。


「……重い」
「ユズ、俺のしかかってないよ」


 くすりと笑う声。
 雰囲気が、少し変わった気がして、ちらと視線を向ければ。
 そこにいたのはヘタレのメイじゃなくて。
 柔らかく微笑んでる。
 メイの腕が、俺の腕を掴んで、顔の脇に縫い付けるように押さえ込んだ。


「……ユズ、ねえ」
「……っ、どけ」
「やだよ、勿体ない」


 勿体ないってなんだオイふざけんな畜生。
 鼓動が速くなってる。どくどくいってる。顔に熱が集まってくるような感覚。
 やばい。なにか知らんがやばい。
 だってメイが、嬉しそうに笑うから。
 きっと俺の顔は、


「ユズ、顔真っ赤。かわいい」
「…っだ、ま、れ」
「心臓の鼓動が早いね、どうしたの?」
「……っ、」


 ああもういやだ。
 顔が、迫る。


「───っ!!…ぁっ」
「ん、かわいい」


 首元にメイの口が触れて、軽くキスをされて耳を舐められた。
 ぞわりと腰が粟立つ。
 こいつ、わざとか。


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