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短編集(~2019)
つんでれ
 



 
「ねーねー、やっぱりユズは俺のもんだって証明するべきなんだよ」


 何をふざけた事言ってやがる。

 高校生活二年目。
 男子しかいない高校生活一年生の中盤にして、突然現れた編入生。
 目の前でへにゃりと笑いながら俺の手を両手で包み込んでいる。
 天然の灰色した髪に、男子としては大きめ同色の目に二重。
 滑らかそうな白い肌に、透き通る声。

 対する俺は平凡を貫く所々はねたくせっ毛の黒髪に、大きくも小さくもない目。

 そう、いわゆる王道的な立ち位置。


 教室の窓際1番後ろに座る俺の前の席に居座る目の前の美形は、名前を木崎明という。
 木崎明。アキラと書いてメイと読むらしいけどそんなことどうでもいい。
 俺のささやかな幸せである、何もない平凡な日常を尽くぶち壊しに現れたかのような木崎明は、信じたくないが恋人である。

 どういった経路で付き合う事になったのか、なぜ受け入れたかは不明だ。
 どっちから、は言わずとも察してくれ。



「ユズ、聞いてる?」


 こてん、と首を傾げる姿を直視した誰かが失神して椅子から落ちる音がしたけど、この変態の仕種に失神する要素があっただろうか。

 もしか、今の『こてん』か。
 『こてん』がキタのか。
 なんだそれ。

 目の前の美形を無視して隣に視線をやれば、不安そうな顔をした幼なじみと目が合う。
 中々どうして幼なじみも美形で、爽やかスポーツマンって感じだ。
家も近所だから、親ぐるみで付き合いが長い。
 ちなみにポジションは保護者。


「ね、ユズ、ちゅーしよ、ちゅー」


 ひとり頑張ってるメイ。
 きらっきらとした目をして、椅子から立ち上がって迫る、美形。
 手は捕まっている。
 言わずもがな、メイの手に。

 よって俺は、足で机を押してそいつの腹に机を減り込ませた。

 ぐっ、なんて呻きは聞こえないフリだ。
 拘束されてた手が自由になったので、鞄を持って教室を出た。
 後ろから幼なじみの日和がついて来るのを横目に、廊下を早足で進む。


 ホームルーム中ずっとあれを繰り返していたが、今は既に放課後である。


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天音 柚子(アマネ ユズ)
無表情無関心脇役主人公的な存在。
経路不明なメイの恋人。

木崎 明(キサキ メイ)
王道的美形編入生。柚子の恋人。


 

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あきゅろす。
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