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短編集(~2019)
05
 


 慶秀さんの感情は殆どが『喜』だ。
 常ににこやか。
 けど、怒る時も『喜』の感情が強くて迫力がない変わりにある意味恐怖だ。
 挨拶は大切。
 改めて再確認したのは、慶秀さんと初対面してからだ。

 とりあえず俺は慶秀さんを連れて、目的地を目指す為に駅に向かう。
 相変わらず慶秀さんは、きょろきょろと忙しなく周りを見ながら歩くもんだから、手を繋いでないとぶつかる。
 手を繋げるのは嬉しいんだけどさ。
 けどさ。
 なんて考えてたら、ぐっと腕が引かれる。
 何か見つけたらしい。


「立夏殿、あれはなんじゃ!?なにゆえ何奴もおらぬに動いておるんじゃ!」
「ああ、あれは現代の飾りですよ、提灯みたいなものです」


 ほう、と息を吐きながら見つめる視線の先には、蕎麦屋のデカイ看板の上にある、大きな丼に入った蕎麦が箸で上下に動かされている、アレ。
 誰が動かしているわけでもない、機械で上下されるアレ。
 手動だったら腕が死ぬ。


「現代は、面妖(めんよう)なもがをばこしらえるんじゃな」


 ……、ああ、うん。
 面妖って、怪しいとか不思議って意味だよな。
 怪しく見えるのか、あれが。
 そりゃそうだ。
 一瞬、面妖ってなんだとか思っちゃった。


 駅に着いて切符を買おうと販売機の前に立つと、二度目なのに慶秀さんはめちゃくちゃ渋い顔して見てる。
 顔は宗夜だけどさ。
 なんかもう雰囲気が渋いよ。


「こやつは、良き奉公をばするでござるな。どんな風になり申してるとか見たもうものでござる」
「慶秀さん前回もそれ言ってた」
「さふでござったや。久方ぶりであると忘れてしまう」
「ですよねー」


 切符を渡して、説明してから改札を通れば、まあ言わずもがな速攻で出てくる切符にびっくりしてるもんだから、周りの視線が痛いです。


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