短編集(~2019)
03
今日は日曜日。
学校は休みで、俺はいつも通りに朝から起きて身支度をする。
こんな休みの日に、平日と変わらない時間に起きてるのは恋人である宗夜と出掛ける約束をしているからだ。
いわゆる週末デートってやつだ。
だけど少し不安がある。
遅刻とかバックレとかそんなんじゃなくて、今日は『宗夜』だろうかという不安。
ぶっちゃけまともに『宗夜』とデートした事は、殆どない。
だって、週末になると毎週の如く人格交代してるんだもん。
なんでかは知らないけど。
とりあえず平日、学校で交代してる事は滅多にないから安心だけど。
時々あるんだ。
授業中に交代しちゃうことが。
席替えして宗夜は俺の前にいるから、顔見知りの人格だったら対応出来るけど、そこで交代した別人格がまったくの『はじめまして』だったら、そりゃもう大変なんだ。
話逸れた。
とにかくだ。
宗夜を迎えに行くために、俺は早々準備を済まして家を出た。
つっても徒歩一分くらいだけど。
二階建ての一軒家を前に、宗夜の部屋がある窓を見上げる。
浅くため息を吐いて、インターホンを押す。
- ぴんぽーん
ありきたりなチャイムの後、かちゃりと静かに玄関が開く。
どきどきする。
変に汗とか出てくるんだけどまじで。
出てきたのは母親で、なんか不安そうな顔をしている。
「おはようございます、迎えに来ましたー」
「…おはよう、りっちゃん。今日ね、」
「………まさか、」
「そのまさかなのよ。朝からどっきりよ、毎日がどっきりよ」
ってことは、交代してるのか。
手招きされて家に上がりながら、おばさんは溜息をついている。
発言は前向きなんだけどなあ。
確かに毎日がどっきりだ。
階段を上がり、奥にある部屋のドアノブに手をかける。
開けて、部屋を見た、ら。
モノクロなベッドの上で、イイ姿勢で正座する宗夜がいた。
俺は知っている。
この場面に出くわした事を覚えている。
…イイ姿勢で正座っつーことは。
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