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短編集(~2019)
12
 


 戻ってきた三門さんに、時間をかけてかけてかけて少しずつ話し出す過去。


 時々合う目に、ずっと見続けられている事を自覚させられて俯いてるのが殆どで。
 信じられないかもしれない。


 嘘だと思われているかもしれない。


 俺の口から俺の言葉でしか、その真実は分からないのだから、結局言葉を信じるしかないなんて、虚しすぎやしないか。

 自分の気持ちには嘘をつくのに、こんなときは素直になるなんて。

 なんて、自分勝手なんだろう。
 被害者みたいな、顔で。

 どっちか加害者とか被害者とか、そんなのもう分からないけど。


 結局アイツに嘘をつかせていたのは、嘘をつき続けた俺のせいで。
 その事実が、1番虚しかった。
 だからといって自分の気持ちに素直になることは出来なくて、そんな甘い自分が更に嫌になって。


 話ながら考えて、気付けば拳を握りしめてぴりぴりと痛みがある事に気付く。
 そして同時に、三門さんの大きい手が俺の頭の上にあることに気付く。



「おまえは、どうしたい?」
「……ぇ、」


 目を見開く。飛び出しそうなくらい、見開く。


 いまなんて…?


 そろそろと、顔を目を意識を左に向ければ三門さんはじっと俺を見ていて。


「全てを棄てられて、なにもなくなったお前は、どうしたい?」
「…っ、どう、って…、そんな、の…っ」



 決められるわけがない。
 そんなの、なにもなくなった俺が何を選択出来るっていうんだ。



「いいよ、選べよ。選択肢をやる」
「、は…?」


 そう言って、俺の頭を自分の肩に寄せて耳元で聞いた低音の美声に心臓が跳ねた。


 選択肢をやる。
 1、そこらへんさ迷って餓死するか。
 2、その手の人間に拾われて、一生死ぬまで奴隷になるか。
 3、お前を棄てた奴の所に戻って、情けをかけてもらうか。
 4、ここで、俺と死ぬまで過ごすか。


 さあ、どうしたい?


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選択肢と言えるかどうか。
甘ったるくしたい。

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あきゅろす。
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