短編集(~2019)
09
背中に手が戻り、俺は力を抜いた。
力を入れている間ずっと痛かった腹が少し落ち着く。
「大丈夫か?」
三門さんの声にびっくりしたけど、とりあえず頷く事にした。
実際大丈夫じゃないけど。
エレベーターの、独特な浮遊感を味わう。
どこまで上がるんだろう。
ボタンがあるのに押さなかった。
多分あれはカードキー。
もしかして、……最上階、とか?
もんもんと考えを廻らせていたら、ちんっと音がしてエレベーターが止まる。
階を見れば、表示されていた文字は、予想通り『最上階』だった。
まてまてまて。
これ何階建てだ?
改めてボタンを見れば、1番大きい数字は『49』だった。
てことは、50階建てってこと?
エレベーターの扉が開く。
三門さんが歩きだす。
視界は、ふわふわしてそうな黒いカーペットで埋め尽くされて。
その先に見えたのは、重々しく見えるアンティーク調の扉。
なにこれ。
「、扉を開けてくれ」
声がして顔を向ければ、俺を見ている。
俺に開けろってか。
まじっすか。
なぜか息を飲み、俺は手を伸ばしてノブを掴む。
かちゃり、と静かに開いた扉。
「ありがとう」
そう言って、三門さんは満足げに微笑んで部屋へと入っていく。
靴を脱ぎ、俺の靴も脱がされ、奥へと進む。
中を見た俺は、一瞬呼吸を忘れた。
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