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「確かに女の人って聞いて凄く悩みました…でも、臣月のことが頭から離れなくて会いたくて仕方なかったんです」

隣の臣月が俯いている。
目の前の霽月さんは優しく微笑んだままお姉ちゃんに視線を向けた。

「もし、周りが許してくれなくても私は臣月が傍に居てくれたらそれで良いと思ってます」
「―…臣月は時々阿保で、子供でボケた発言とかするけど…私は彼女が幸せならそれで良いと思ってる。臣月が美空さんに出会えて良かった」

少し酷いことを言っていた気がするけれど、やっぱり優しい言葉を零した彼女。
臣月は顔を上げておしぼりを目に押し付けた。

「叶先生もそう思いますよね」
「……美空は可愛い可愛い唯一の妹だ。連れて来る男はくだらない奴ばっかで心配し過ぎて死ぬかと思ったな」

お姉ちゃんはとつとつと言葉を零す。その言葉に申し訳ない気持ちになった。
霽月さんはニコニコ笑いながら臣月の空のコップに焼酎を注いでいる。

「美空が社会人になってますます心配してるときに臣月の事を聞いてね、ぶっちゃけ臣月を殴ろうと思ったよね。男の次はお前かって」
「思考が短絡的ですよね」
「うっさいよ。でもな、臣月からも美空の話を聞いて…何か良いなって思ったんだよ。臣月が踏み出せない事もわかってたし、でも、アタシは二人に幸せになって欲しいと思ってた…だから美空をたきつけて再会させた」

そんなこと考えてたのに気付かれない姉は改めて凄い人だと思う。
お姉ちゃんは続けた。

「アタシも霽月と同じだ。二人に幸せになってほしい。美空、たとえ他の誰が認めなくても私と霽月は味方だよ。そこはわかっていてね」
「……お姉ちゃん…ありがとう」

思わず涙ぐむと隣の臣月が号泣しながらお姉ちゃんの肩を掴んだ。

「か、叶先生!必ず幸せにしてみせます!」
「やめろ!その言い方だと語弊が生まれる!」
「……シリアスな場面なはずなんだけどね」

霽月さんが呆れた表情で呟いた。それを聞いて思わず吹き出すと彼女も笑う。

「見た目とギャップ有りすぎで驚いたんじゃない?」
「そうなんです。第一印象のインパクトが強すぎて…まあ、それも含めて臣月だなって思います」
「そうだね…美空さんって臣月にはもったいないくらい良い子だね。羨ましいなぁ。娘にならない?」

誰もが見惚れるであろう甘い笑顔で首を傾げる彼女に臣月が体当たりを噛ました。

「美空は私のもんだ!娘になんかさせません!」
「号泣しながら言わないでよ…」
「臣月!なに姉を前にして自分のもん宣言してんだ!!お前をボコボコにしてやろうか!」
「このカオスな空間どうにかならないのかな」

感動の場面なはずなのに、それで終わらないのがこの人達だなと思い知った。
けれど、それが居心地良い。




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あきゅろす。
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