SPICE
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「君は何でもできた。教わったらすぐに完璧に。それにその容姿だ。だいぶモテたんだろうねえ、それに虐められもした。だから今は人間不審気味。嫌われない為に普通に憧れる。違うかな?」
「なっ……なんでわかるんですかっ?!」
自信満々な表情で言う臨也に利央はただ驚くしかできなかった。
「あ、当たり?ちょっと鎌かけたつもりだったんだけどねえ」
「なっ……!!」
−騙されたっ!?
飄々とした様子で語る臨也にもはや軽く涙目だった。
そんないちいち反応が顔にすぐ出る利央をまるで愛しいものを見るように見つめながら臨也は続ける。
「先に言っておくよ。俺は君が好きだよ」
「ええ?!」
突然の脈絡のない告白に顔を真っ赤にする。
「言っただろう、僕は人間が大好きだ。人間の美しい所も醜いところも全部含めてね。だから、そんな僕が君のことを好きなのは当然だろう?」
当然のように理解不能な理論を話す臨也に利央は思った。
−ああ、この人変なんだ
「だから君も心置きなく僕を愛すといいよ」
−この人となら、もしかしたら上手くやっていけるかもしれない
♂♀
「オー、イザヤ久シブリ!」
「ああサイモン久しぶり」
「オジョウサンモ久シブリ!」
「…えぇっ!お、久しぶり……です?」
「いや利央ちゃんは初対面だから」
2メートルくらいある黒い男にいきなり話し掛けられた利央は思わず返事をして臨也に呆れられる。二人は今、池袋の街を歩いていた。
あの後、何事もなかったかのように「そういえば俺用事あるんだった、付いてくる?」と言う臨也に連れられて。
「イザヤデートカ?デートイイネー、ナカヨクスシ食ベルトイイヨ」
「でっ、デートじゃないですよっ!?え?!お寿司……?え?!」
「取り敢えず落ち着こうか利央ちゃん」
状況を把握できないまま真っ赤になって否定する利央を臨也は宥めた。
「えっ、だってあたしと臨也さんは昨日会ったばかりで、でも好きって……それで黒人さんがお寿司……?」
「あまり深く考えなくていいよ。さて、そろそろ行こうか。早くしないと彼が来ちゃうからね」
「は、はい……!」
再び手を引かれて青年と少女は池袋の街を早歩きで歩く。
♂♀
「あ、いたいた」
まるで玩具を見つけた子供のような嬉しそうな表情の視線の先には見るからに真面目で気の弱そうな少年がいた。制服を着てはいるがいまいち中学生だか高校生だかわからない程の童顔だ。
「知り合いですか?」
「うん、彼を捜してたんだ。ちょっと此処にいて」
そういうや否や臨也は少年に話し掛けた。
「イジメ?やめさせに行くつもりなんだ?偉いね」
そのまま驚いた様子の少年をそのまま突き飛ばし路地の中へと入っていく。
−どうしよう
置いていかれた利央は一瞬の思考の末、周囲の視線が自分に集まるのを感じ、迷わず確実に揉め事が起きるだろう路地へと足を踏み入れた。
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