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君が好き
※後半甘々注意!


それは雲雀が屋上への扉の
ドアノブに手をかけた時のこと。

よく知った声が聞こえ、
雲雀は無意識に手を止め耳を澄ませた。



「ディーノさんって凄いですよねぇー」

「ははははっ」


声の主はどうやら彼が
草食動物と呼んでいる
次期ドン・ボンゴレ。
と、彼の兄弟子である跳ね馬。



そして、

「あの雲雀さんを教えてるだなんて!」

ピクリ

話題はどうやら、自分のことらしい。

「いやーははっ」

「あの雲雀さんと互角に戦ってるし!
 触ってもトンファー出してないし!」

確かに最近ディーノに
髪の毛を触られても、撫でられても
トンファーを出していない。
しかしそれは面倒くさいからであって
別に心を許しているからではない。

それに、抱きしめられたりと
過激なスキンシップになれば
トンファーどころか拳で牽制している。


「まっ確かにお前のが可愛いかもなぁ」

ドクン
一瞬、音が消えた。

そしてそんな自分に動揺する。


ただディーノがツナの方が
可愛いと、言っただけのこと。

ただそれだけのことなのに・・・。






気がつくと、駆け出していた。


皮張りのソファーに体をうずめる。

全速力で駆けて、体がひどく熱い。


さっきのアレは何だったんだろう。

胸が、痛んだ。

周りの音が途絶え、
ディーノの言葉が頭に
何度も何度も響いて、怖くなった。



体が、震えた。

そっと自分を抱きしめてみたけれど、
理由はやっぱりよく解らない。









コンコン


「雲雀ーいるかぁ?」

どこかで彼の声がする。
自分の名前を呼んでいる。


「入るぞー」

ドアの開く音がする。



「恭弥・・・?」

近づく気配がする。

雲雀は無意識に手元にあったトンファーを確かめた。


と、

ディーノが髪の毛を触ろうとした瞬間。

雲雀のトンファーが、
雲雀の身体が主の意志に従わず
激しい感情のままに勝手に動き、

「うわっ」
ディーノの腕を殴打した。





「きっ恭弥・・・?」


驚いたのはディーノだけではなく、
本人もまた然り。

と言うより、本人の方が驚いていた。

「・・・。」
ディーノを攻撃したまま固まる雲雀。

自分は今何をした?
髪を触られそうになっただけなのに。


・・・?







“だけ”?





「恭弥、どうした?」

心配そうな声に意識を戻すと、
ディーノがこちらをうかがっていた。

「・・別に。」
胸が変にもやもやする。
それが少しずつ苛々に変わっていく。



どうして

あんな草食動物なんかより


僕の方が…――


「え?」

「?」



今自分は何を考えた。

自分の方が草食動物より可愛い?


気持ち悪い。

自分の思考が、解らない。


感情が勝手に動き回っている。





「恭弥…ホントどうした?
 なんか今日、すごく変だぞ?」

「・・・。」



気づくと口が勝手に動き出していた。

「・・・あなたに何が解るの」

「え?」

「僕みたいな狂暴で可愛気のない奴より
 可愛い可愛い弟弟子のとこいきなよ」

「・・恭弥?」


訝しげにディーノが名前を呼ぶ。

呼ばないでよ
アイツを可愛いと言ったその口で。

「本当は僕なんかといたくないんでしょ
 でも赤ん坊が頼むから、

嫌々教えてるんでしょ」


「いいよもう。
僕は1人でも十分修行できる。
あなたがいなくたって、1人で…」


「恭弥ッ!」

背骨が軋む程抱き締められた。


「泣くなっ」
「…っ泣いてない」

いつの間に流れていたのか、
抱き締めたディーノのシャツを目から止めどなく溢れるものが濡らしていく。

「何で泣いてんだよ」
「泣いてない…っ」
「言えよ。聞いてやるから。」
「・・・。」



「嫌。」
「なっ」
「話したくない。
 あなたなんて嫌い。」

「…俺が原因なのか?」
「・・・。」

「なぁ、話して?
 俺、お前を泣かせた自分が嫌だ。
だからもう泣かせない為に聞きたい。」


そう少し掠れた声で囁かれるのが
雲雀はひどく弱かったりする。
多分、否絶対無自覚なのだろうが。

結局雲雀は話してしまうことにした。



「・・屋上で、」
「うん」
「あの草食動物に可愛いって言った。」
「…へ?」
「言った。」


何となく恥ずかしいので
胸板に顔を強く押し付け
もう黙ってしまおう決め込む。


すると、

「っ恭弥〜!!」
「ちょっ何するの?!」

ぎゅうっと更に強く抱き締められた。

「お前っマジ可愛過ぎッッ!!」
「はっ離して!」
「まさかツナに嫉妬するだなんてー」
「・・・はぁ?」


 嫉 妬 ?


「だけど心配すんなっ俺はお前だけ!」
「…っ
 そっそんなの知ってるよ!!」
「アレは、ツナの方が
生徒や教え子としてはいいってコト!
 恋人としてはお前が1番だぜっ」
「解ったから離してっ」




「でも・・・」

ペロリ

「っ?!」
「泣かせて、ごめんな?恭弥。」
「・・・いいよ、別に。」








「あなたなんて、嫌いだし。」

ぷいっと後ろを向く。


トンファーを構えていた両手は、
片方は降ろし、もう片方はさっき
ディーノの舌が這った頬を包んでいる。





そして

雲雀の両耳が赤く染まっているのが、

決して向かいの窓から
射す夕日のせいでないことを、


ディーノだけが、知っていた。




→#
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あきゅろす。
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