震える愛しさ
「きょーや、」
どうした?とは訊かず、ただ優しく頭を撫で、名を囁く。
無理に言葉にしようとしなくていい
俺は此処にいる
そう伝えたくて、
しかしわざと態度だけで示す。
1人が好き
群れるのは大嫌い
そう自ら何度となく言ってきた雲雀は、しかしたまにこうしていきなり甘えてくることがある。
彼の家庭内事情は知らないし訊こうとも思わないが、原因はきっとそこや過去にあるのだろう。
ぎゅっと躊躇わず強く引き寄せ抱きしめる。
孤高の風紀委員長と歌われその実人一倍寂しがりな彼が、どこかへふらりと消えないように。
自らの敵前逃亡に因り失われた父の唯一つの命。
何も護れず、そんな自分の弱さに咽び泣いたあの日。
しかし今自分には自らの命を盾にしてでも護りたいと強く想う大切な命がある。
その喜びを確認するように。
何人にも邪魔されぬように。
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