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恋は 盲目
数え切れない虚無の約束





甘い香り

甘い言葉

厚い仮面












ザンザスは舞踏会が大嫌いだ。

それは、次官であり【恋人】である
S.スクアーロがよく知っている。



「ザンザス様、お初にお目にかかります。ポリファックス家長女、ドロシーと申します。」
「・・・あぁ。」
「髪、お下ろしになられたんですね!
 とても似合っていらっしゃいますよ」
「・・・あぁ。」

「…で、ではごきげんよう」








「いくら何でもアレはないぜぇ」

「・・・。」



スクアーロはザンザスの、
先程の態度を軽くいさめた。


「嫌なのは分かるが…」
「面倒くせぇ。
 あとどれくらいなんだ」

「…後1時間と少しだな。
 もう少しなんだから我慢しろよぉ」


次官としては、どうしても見逃せない。






本当は嫌だけど。

凄く凄く嫌だけど。



だが何を言ったところで、
変わらないのはよく解っている。
ザンザスが【御曹司】であるから。



ならばせめて完璧な次官をつとめたい。













しかしそんなスクアーロの思いが、

ザンザスの怒りを誘っていたことを





スクアーロ本人は気が付いていなかった。
















「スクアーロ君、少しいいかね」

「あ・・・はい。
 ボス、ちゃんとやれよぉ」

「・・・。」



後30分、というところで同盟Fの幹部から、スクアーロへ声がかかり外へ出た。

不機嫌オーラを撒き散らしているザンザスがとてつもなく気がかりではあったが。










ホールを出て、休憩室の
脇にあるコロニーに出る。

夜風が髪を撫ぜていくのが気持ちいい。



しかしこれから話す内容は、
きっと気持ちの良いものではないだろう。




「スクアーロ君、ザンザス様には
恋人のような女性はいるのかね。」



やっぱり。
このような場所まで、態々ザンザスから離して話す内容といえばどうせそのようなものだとは解っていた。


スクアーロは言い慣れて
段々飽き始めていた言葉を発した。




「…いえ、いまだおりません。」

「そうか!
 実は私の娘がザンザス様に…―」



スクアーロは聞いているフリを
しながら右から左へ受け流す。

もう、聞き飽きた。





「申し訳ありませんポリファックス様、
 我が主には結婚する気がないようで。」

「そこを何とか訊いてくれないかね?
 次官である君なら訊く位大丈夫だろう」


「・・・一応訊いてみますが、
 あまりご期待なさらないで下さい。」

「おぉありがとうスクアーロ君!」




嬉しそうに笑うMr.ポリファックスに申し訳ない気持ちでいっぱいになっていく。


あの、女は抱くだけにある等と考えている男が結婚なんてするわけがないのに。

どうして約束なんてものしてしまったのだろうかと今更ながらに後悔してしまう。




それと同時に、こんなことを
話しているのに平気な顔を
していられる自分に強い嫌悪感を感じる。










ただただ、


ホールへ消えるMr.ポリファックスの背中と

濃紺の空に瞬く星々を眺めて静かに泣いた




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