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smesso detto
捨てた言葉




愛してる

性欲の色をした唇が
譫言の様に紡いだその言葉に、


吐き気が、した。















「あ"ぁ"?」


スクアーロはザンザスからの
問いに問いを返し、

「あ"ぁ"じゃねぇ」
拳をお見舞いされ
後の棚に頭から突っ込んだ。


「い"でぇえ"…
ボスゥ流石にこりゃないぜぇ!

誰だっていきなりンなコト
言われたら訊き返すだろぉ」




何故、

何故愛してると言わないのか。


「何故だ?」
「・・・・・。」

「ボスは言われたいのか?」
「ハッカス鮫ごときに
 言われたいわけあるかよ。」
「じゃあ言うわけねぇだろぉ」
「・・・。」



「それに、
それは恋人同士が言うモンなんだぜぇ」







「しししししっ
馬鹿鮫またボスに殴られてやんのー!」

「まぁまぁスクちゃんったら大丈夫?!」

「お金がかかりそうだね。」

「・・酷い有り様だな。」


痣を顔面に数ヶ所、そして吐いた血で汚れ破れた隊服姿のスクアーロが食堂へ入ると、各々個性的な労りの言葉で出迎えた。

いつも通りの光景。ルッスーリアもいつも通り、取りやすい様棚に置いてある救急箱を取りに行く。


「もー!
今日はスクちゃん何やっちゃったの?」
「しししっ
またどーせ余計なコト言ったんだろ」
「う"ぉお"い…
まるで俺がドジみたいじゃねぇかあ」
「違うよ馬鹿なんだよ馬鹿鮫。」
「ちょっとベルちゃんったら
そんなコト言わないの!

スクちゃんもベルちゃんに
殴りかかっちゃ・・・あら?」


しかしそこで気がついた。

スクアーロがいつもより
元気がないということに。


いつもなら既に殴り合いをおっ始めているはずなのに、大人しくソファーに座り俯いている。



「…どうしたの?」

妙な緊張が走る。

「・・・実はよう、
ボスに何で『愛してる』と言わないのかって訊かれて…―――」










数分後。

話を聞き終わったルッスーリアは、
溜め息を漏らした。


「なあんだそんなコトだったのぉ
心配して損したわぁ!」

「う"ぉお"い!!
そんなコトって何だそんなコトって!!!
どう考えたってオカシイだろ!!」

「あなた鈍感過ぎよ!!
ボスが可哀想でならないわー」

「な"っ」



「ねぇスクちゃん?
あなた何で8年もボスを待ったの?」

ずいっとルッスーリアは
スクアーロに顔を近づけ、問う。

「そっそれは…」
「どうして理不尽な暴力に耐えられているの?」

ずいずいっ

「どうしてボスとベッドインできるの?」

ずいずいずいっ

「う"ぉ"おい"ルッス…近いぞぉ」
最後の問いに赤面しつつ、無駄な抵抗を試みてみる。


「ぜぇんぶ好きだからでしょう?!」

「う"ぁあ"ぁ"あっ!?」
今度は肩を激しく揺さぶられる。


「まったく!
ボスもスクちゃんもお馬鹿さんっ
ちゃんと言っちゃえばいいだけのコトじゃないっ」
「そ…そんな簡単じゃねぇぞぉ」

「いいえ簡単!」


剣豪になるよりねっ
と一言更に叱咤すると、
ルッスーリアは救急箱を片付け
サッサと食堂を出て行ってしまった。





「・・剣豪になる方が楽だぜぇ」

スクアーロの一言を聞かずに。





上司と部下

ボスとその剣


他に何の関係があると言うのか。
それは、髪を伸ばし始めた時
決して変わらないものに自らした。











smesso detto


(今更愛してるだなんて

 言えるワケ、ねぇだろぉ…)











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