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例えば彼は、食満留三郎は、私が抱きしめたらきっと骨なんかバッキバキに音を鳴らして見事に崩れちゃうんだろうなあ、私は力は強いから。とか思う訳だけど、確証なんかないから試しに抱きしめてみてそしたらやっぱ高い声でやめろやめろと鳴いちゃったから、力を抜いてすとん、とその場に立たせてあげた。
その時ふらふら私に身体を任せた彼の、なんと脆いこと!

馬鹿野郎、痛いっ、つーの。ギリギリと怨みの念を込めた声が耳元に届いてでも、ああ私、留三郎より背は少し高かったんだと相変わらず素っ頓狂で阿呆な思考回路。
馬鹿じゃなかった、阿呆だったね。残念無念不正解、惜しかったねまた今度ね。そんな思いで彼の言葉なんか微塵も鼓膜を響かせなかったから、私の身体は次の段階ネクストステージへと自然遂行、(制御装置なんてありません)、傾いた彼の身体を肩を掴んで直立させて私を見上げさせる形、少し釣り上がった留三郎の目はさっきのことで少し潤んでる。
太陽の光を受け取るそれはまるでビー玉みたいにキラキラのぎょろぎょろで、真っ黒な瞳なんか私を見つめて離さないよ。

恥ずかしいからやめて、て言ったら睨んでるんだけどと返された。ああそうか、だからぎょろぎょろしてんのか、て自己完結っていうの、そんな感じ。

でもね留三郎。私はそれ嫌いじゃない、むしろ好き。

「綺麗だと思うぞ留三郎。」
「…ふざけてんの」
「私はいつだって真面目だぞ!!」

とても憤慨した私にさらに追い撃ちをかけたいのか知らないけど、留三郎はあーほ、と呟いた。(あ、正解、おめでとう)
私はいつだって真面目、大まじめだ。ふざけてんのはそっちでしょ、そしたらいつの間にか目線外されちゃって外さないでよ、私が嘆願しても彼はそのキラキラを維持したままそっぽなんか向いてる。キラキラからぎょろぎょろは、もう見えなくなっていたけれど。

そうしてよくよく彼を見ててそしたらそこでちょっと疑問があったんです(その理由がわからないほど、私は馬鹿でも阿呆でも、子供でもなかったけれど)。
ねえ、留三郎。
なんで顔赤いの?と、だがしかし、子供地味た声で彼に尋ねる。

「留三郎、」
「……………」

私の問いに知らんと叫ぶためにぐるりとまたこっちを向けた赤色の頬したそれが、なんだか愛しくなって、その唇にコンマ0.03秒でちうと口付けてみた。

その触感の、なんとやわいこと!

顔を離すとキラキラのうるうるで綺麗だなって瞳をした彼はさっきよりも顔が赤くて赤くて、猿みたい。そう言ったら掴んでた肩がわなわな震えてそうしてバキッ。

これでもかって位の音が耳まで届いてさあ。

「痛い、留三郎」
「当たり前だ、痛くしたんだ、当然だ」
「あ、そうか。」

変に納得した私はひりひりと痛む殴られた頬を撫でる。耳もジンジンして本当、痛いよ、どうしてくれんの。知らねー自分のせいだろっ、て、留三郎、酷い。

例えば彼は、食満留三郎は、照れた赤い顔とキラキラの眼球を携えて目の前にいる訳で、私はそれをとても好きだと思って彼に口付けた。


それは、私が試しに彼を抱きしめたことよりも確証のあることだったのだ。
(彼もそのことを知らないほど、馬鹿でも阿呆でも、ましてや子供でもない。)







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こへとめ万歳


あきゅろす。
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