[携帯モード] [URL送信]


そして風紀委員長の仕事が始まったのだが…

そこからが地獄だった。


「「ね〜、まだ〜?」」


琉那神兄弟の急かす声が聞こえる。
でも僕は文章を読むことに必死で気もそぞろに、もうちょっと待って!と返すことしかできなかった。



風紀委員会は四月に入ってから始動するが、他の生徒会や委員会はそれ以前に会長、委員長が選ばれ動き出している。
そのため風紀委員会は他より仕事が溜まっていたのだ。



「「早くしないと俺らが鳴海先輩に怒られるよ〜」」
「もう二十分経ったよ〜」
「どんだけ読むの遅いの〜」
「「早く読んで判子ちょーだいよー!」」

「うるさいねんお前らは!」


心が挫けそうになっていると恒賀先輩が琉那神兄弟の頭を順番に叩いた。


「「痛ーい!」」
「そんな急かされてたらできるもんもできんやろ!奥の戸棚にクッキーあるさかいそれでも食べてんかい」
「「…はーい」」


風紀室は委員長、副委員長の机と会議用の長テーブルにソファー、そして奥には簡易キッチンがありそこでお茶を淹れられるようになっていた。琉那神兄弟はその簡易キッチンの場所にある戸棚からクッキーが入っている缶を見付けソファーで食べ始めた。


「恒賀先輩、ありがとうございます」
「ええって」


恒賀先輩にお礼を言うと優しく微笑まれた。


「黄々ちゃんは黄々ちゃんのペースでやればええんよ」
「……はい」


恒賀先輩の言葉に気持ちが救われる。きのうからこうやってフォローをしてくれる先輩には本当に感謝の一念に尽きた。

そのとき風紀室の扉がノックされて顔を上げる。入ってきたのは鳴海先輩だった。


「風紀委員のほうに生徒会の書類が紛れてなかった?」


鳴海先輩が近くにある書類を覗き込みながら訊く。
でも正直、僕は目の前の仕事に追われていて心当たりがまったくなかった。


「どんな書類なん?」
「バスケ部が合宿やりたいからその場所の確保と予算を下ろしてほしいっていう申請書なんだけど」
「ん〜、ちょい待ってな。……黄々ちゃん、その内容に覚えある?」
「え〜と、たしか…」


さっき読んで左側に積んだ処理済みの書類を一枚ずつ確認していく。

何枚か捲ったとき――


「あ。これだ」


その書類を引き抜いて内容を確認する。確かにバスケ部の申請書と書かれてあった。

今まで黙って僕を見ていた鳴海先輩が声を硬くしながら僕に訊く。


「……もしかして判子を押したの?」
「…え?はい…」

「んのっ馬鹿!!」



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!