[携帯モード] [URL送信]
12


風紀室に風紀委員全員が集まることはあまりない。せいぜい週に一回開かれる風紀委員全体ミーティングのときくらいだ。あとはローテーションで組まれている校舎内の見回りと、各自なにか風紀委員長に伝えておきたいことがあったときのみ風紀室に顔を出す。といっても、書類仕事がある僕は毎日風紀室に来ていたが。
風紀室の真ん中にあるミーティング用の長テーブルに風紀委員、全十一人が席に着いている。その席の上座に委員長の僕が座り、右隣に副委員長の恒賀先輩が座っていた。
進行役の恒賀先輩が一通り話し終わったあと、合図を送るように僕を見たので、僕は緊張する中、大きく息を吸い込んで話しをきりだした。


「あの…、じつは皆さんにお願いがありまして」
「お願い〜?なあに、黄々〜」


テーブルの中程にいる榊原先輩が、テーブルに腕をつき頭を手で支える。にっこりと笑顔付きで言われて少し僕の心が軽くなった。


「旧校舎で、……その、女の人の幽霊を見たっていう人がいまして……。風紀委員会で調べてみようと思うんです」
「幽霊〜!?」


風紀委員一年の上島くんが口を曲げて声をあげる。ワックスで固めた自慢の金髪が動きに合わせて前後に揺れた。


「んなもんいるわけねえだろ!」
「というより、それは風紀の仕事じゃないだろ。肝試しがしたいなら一人でやれば?」


同じく一年の結城くんも顔を顰めて僕を見る。
幽霊なんてそう簡単に信じてもらえないだろうと思ってはいたが、その言葉を出しただけでここまで食い付いてこられると先を続けにくくなってしまう。
三人いる一年生のうち二人が牙を剥いている中、榊原先輩は一人腹を抱えて肩を震わせていた。
見かねた恒賀先輩が上島くんと結城くんに顔を向ける。


「お前ら。まだ黄々ちゃんの話しは終わってないんやから、少しは黙っとき」
「でもおかしいじゃないですか。風紀が幽霊なんて!」
「結城、言い分ならあとで聴くさかい、今は黄々ちゃんの話しを聴くんや」
「……なぜいきなり、そういうことに?」


三年生の満度先輩が眼鏡を押し上げ質問をした。
ここで全員を説得させられなかったら風紀委員会で女の人の正体を探ることはできないだろう。気を抜けば逃げ出したくなるような空気の中、僕は満度先輩だけじゃなく全員にその理由を伝えようと背筋を伸ばした。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!