[携帯モード] [URL送信]
10



「お化けが出たあ!?」


鳴海先輩から勉強をみてもらったあと、恒賀先輩から紅茶をだしてもらいくつろいでいたとき、昼休みにうけた相談のことを僕は二人に話した。そしてそれを聞いた鳴海先輩の感想が先のようなものだった。


「お前騙されてるんじゃないの?」


鳴海先輩が疑わしげな顔で僕を見る。
恒賀先輩はなにもいわないが、難しそうな顔をしていた。


「そんなことないですよ!柏木くんは確かに言ったんです!」


昼間の相談内容とはこうだ。
柏木くんは文芸部らしく、夕方花壇の水遣りをしたあと水場に時計を忘れてしまったらしい。夜になってそれを思い出し、柏木くんは時計を取りに行った。もう辺りは闇に沈み、人気もなく気味が悪かったため水場まで近道をした。そうして無事時計を見付けたあと、来た道を引き返そうとしたときに、見たのだ。近道として通ったすでに使われていない旧校舎の傍で。誰もいないはずの校舎の窓からこちらを見る、女の人を。


「馬鹿馬鹿しい。見間違えでしょ」


鳴海先輩が呆れたように手をひらひらと振る。


「でも見たって言ってましたよ!それにもし本当だったら恐いじゃないですか」
「あのねえ、俺は中等部からここに通ってるけど、旧校舎に女の幽霊が出るなんて聞いたことないんだよ。見間違いじゃないなら、お前を騙すための嘘でしょ」
「でもっ…」


旧校舎を通る道は園芸部がよく使う近道らしい。今までもその道を使ってきたが、女の人影を見たのは初めてだそうで、もし幽霊だったりしたら恐くてその道を通れなくなるから風紀委員長の僕に調べて欲しい、というのだ。
ちなみに、中、高と男子校なこの学園に寮監の人を含め、女の人はいない。
もし旧校舎で見たという女の人が生きた人間だった場合、不法侵入ということになるし、幽霊だった場合は……正直手に負えない。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!