6 「……鳴海先輩に…?」 琉那神兄弟の赤い髪のほう…、つまりは兄の晶が少し声のトーンを落として訊いてくる。 本気で悩んでいる僕を見かねて、気を使ってくれたようだった。 「鳴海先輩は頭良いし、教えるのうまいし、家庭教師してもらうならぴったりだと思うけど」 「なんだよ、晶」 琉那神兄弟のピンクの髪のほう、弟の尚毅が背後から晶の首に腕を回す。その唇は不満そうに尖っていた。 「俺置いて一人で勝手なこと言うなよ」 「しようがないだろ。きいちゃん、マジで勉強できなさそうだし」 「う…」 的確すぎる晶の言葉が耳に痛い。 「指名で選ばれる憧れの風紀委員長が、テスト赤はまずいっしょー」 続けて晶がそう言えば、尚毅も納得したようだった。頭が上下に動いている。 「あー、それもそっかー」 少し機嫌が直ったようで、尚毅が晶にぎゅっと抱き付いた。 そしていたずらっ子のように顔を輝かせた。 「それなら鳴海先輩に教えてもらうと良いよー。まあ鳴海先輩は」 「「スパルタだから頑張ってねー」」 「…………」 鳴海先輩の名前が出たときから何となくそんな気はしていたが、先のことを思うとどうしてもうなだれてしまう。 だが実際問題として、このままだと赤点どころか一桁しか取れなさそうな今、スパルタが嫌だとか言っている場合ではなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |