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新入生歓迎会も何とか終わり、風紀委員長の仕事にも少しずつ慣れ始めた頃。
僕は久しぶりに授業を受けるべく教室に向かっていた。
実のところ、風紀委員長に指名されてからあまりの忙しさに授業に出れていなかった。
周りからの視線が痛く、居たたまれなさを感じていたのも教室から足が遠退いた理由の一つかもしれない。
そんな訳で、僕は校舎の廊下を歩きながら心臓が口から飛び出る程ドキドキしていた。
「うぅ…、胃が痛い…」
思わず独り言が出る。
最近は教室がある校舎とも疎遠となっていたし、寮でも食事は自炊が主で食堂に行くこともなかった。お昼も風紀室で出前という贅沢な方法を取らせてもらっていたので、一生徒として一般生徒の前に出るのは本当に久しぶりだった。
久しぶり過ぎて朝早くに寮を出て来てしまったのだが、よく考えればその分長く教室に居なければいけないということで、来て早々、後悔する気持ちが胸を満たしていた。
「「きいちゃーん!!」」
「うわぁ!」
両肩にタックルされるような衝撃を受け前のめりになる。
それどころか踏ん張り切れずに床に頭を強かに打ち付けた。
「あはは!きいちゃん何やってるのー!」
「一人ボケなんてしなくて良いんだよー!」
僕の両肩に左右それぞれから突撃して来たのは琉那神兄弟だった。
「い、痛い…」
別にボケたかった訳じゃなく、二人のせいで床に頭を打ち付ける羽目になったのだが、楽しそうに笑い転げる二人には言っても無駄なようだった。
涙目になりながらも一人で起き上がる。
そうするとふとした疑問が頭を過ぎった。
「二人とも、朝早くからどうしたの?」
生徒会も風紀委員同様、いやそれ以上に仕事が忙しいはずだ。
朝から生徒会の仕事をしていることも多く、こんなところで僕を見て笑っている様子に違和感を覚えた。
「「鳴海先輩からのお達しだよ〜」」
「……鳴海先輩…?」
きょとんと目を瞬く。
琉那神兄弟は不満そうに唇を尖らせた。
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