10
左頬に重い拳が入る。
オリエンテーションの最中、日頃の恨みだか何だか知らないが俺は複数のクラスメートに囲まれ殴り蹴られの繰り返しにあっていた。
「――っ―!」
木の幹に追い詰められ複数から順に暴行を加えられる。
唇の端が切れ、口元からは血が滲んでいた。
しばらくそれが続くとその中の一人に問いかけられる。
「お前、涼太に気があんのかよ?」
「うぐっ――…。――え?」
痛みに耐えながら、その質問に内心またそれか、とため息を吐いた。
「俺はホモじゃねぇよ。涼太はただの友達だって……ぐっ…」
腹に膝蹴りを入れられ息が詰まる。
男子校であるこの学園は同性愛者が多いらしく、俺が……というより何も知らない外部生が、友達と思って接しているだけで他者から変な因縁を付けられることは経験済みだった。
「……お前ら外部生はよくそう言うけどなあ、……この学園じゃそれは通用しねぇんだよっ!」
早いスピードで相手の右拳が掲げられるのが見えた。
殴られる、と覚悟を決め俺は強く目を瞑った。
「はあ〜い、ストッーーーープ」
「………………へ…?」
突然入ってきた間の抜けた声に俺だけじゃなく、俺を囲うクラスメート達も一様に呆気に取られたような顔をした。
「きみらオリエンテーションに参加しないで、こんなところでなにやってるの〜?」
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