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悲劇は突然やってくるって云うけど、僕の場合もそうなんだと思う。


さっきまで歓声が溢れていた体育館は戸惑いに静まり返っている。みんな今発表された名前が誰のものかわからないんだ。
でも僕はわかってしまった。だって自分の名前なんだもん。
頭が真っ白になる。
何が何だかわからない。


(…そんな…まさか……)


まさか、あの風紀委員長に僕が指名されるなんてっ…。








ここ、中高一貫校の全寮制男子校である森下学園の風紀委員会は変わっている。
風紀委員長と風紀副委員長がそれぞれ生徒会長、生徒会副会長によって指名されるのだ。
その指名式は一種のイベントで、だれもがまさかと思いながらも自分が選ばれるんじゃないかと期待する。
それほど風紀委員長と副委員長は人気の職なのだ。何故なら誰もが憧れる生徒会役員と近付けるから。

でもこの春、森下学園高等部一年に外部入学した僕――水川黄々はそんなことまったく思ってなかった。
ただ平穏無事に高校生生活を送れればそれだけでよかったんだ。
それなのに――。





『風紀委員長に水川黄々を任命します』




僕の頭の中ではこの言葉がグルグルと廻っていた。

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あきゅろす。
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