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「だって龍音寺先輩が同じ部屋にいて手出さないわけなっ…」
「あ〜もう、お前らちょお黙っとき!」
話していた琉那神尚毅と片割れの晶の口を手で押さえ、恒賀先輩は二人を黙らせた。
そしてなぜか全員の視線が僕に向けられる。
当の僕は琉那神兄弟が何のことを言っているのかわからず、首を傾げていた。
「………。」
………寝る?
………襲う?
………。………襲う!?
「僕、龍音時先輩から殴られたことなんてありませんよ!」
「「「「「「………………はあ?」」」」」」
「……………へ?」
全員一斉に間の抜けた声で問い返され、何かおかしなことでも言ったのかと不安になる。
(でも襲うってそういうことだよね…?)
僕はこの状況を説明してほしく全員の顔を見渡した。
「……あー、まあ…そうなんじゃない?」
いち早く我を取り戻したらしい鳴海先輩がおもむろに口を開いた。それにならって恒賀先輩も続ける。
「そやそや、琉那神は黄々ちゃんが龍音時に殴られてないか心配やったんや」
「「えー違……もが」」
「良いから、そういうことなんだよ」
先程の恒賀先輩のように、琉那神兄弟の口を塞いで黙らせた鳴海先輩が再び歩き始める。
それに続き、いつの間にか止めていた足を僕達も動かした。
まだ不満そうに頬を膨らませ、僕を見ている琉那神兄弟に龍音時先輩が声を寄越す。
「お前らは俺が殴りかからないか心配だったんだろ。そんなことしねぇから安心しろ」
「というより、いきなり同室者に殴りかかったらいくら会長といっても停学だよ」
「………だからしねぇっつの」
前のほうで軽快に交わされる会話を聞きながら、僕は隣に並ぶ恒賀先輩を見上げる。
「………僕変なこと言いました?」
その言葉に恒賀先輩の手が優しく僕の頭を撫でた。
「言うとらんよ。大丈夫やから、安心しい」
……………そうなのかな?
納得できず首を傾げたまま、僕達はエレベーターホールに着いた。
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