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それから数日経ち新入生歓迎会当日。
学園からバスで一時間程行ったところのホテルで開会式を行っていた。
ホテルの広い部屋を貸し切って行われているこの開会式には、生徒会と風紀委員長、副委員長が前に列び主に生徒会が進行を行っていた。
もうすぐ風紀委員長として諸注意を言う番が近付いている。
言う台詞を何度も頭の中で繰り返し、シミュレーションをする。
僕はさっきからバクバクとうるさい心臓を押さえるよう胸に手を充てた。
そうでもしないと緊張で今すぐ叫び出してしまいそうだった。
「大丈夫やで、黄々ちゃん。諸注意なんてちょっと言ってすぐ終わりや」
「は、はい」
小声で励ましてくれる恒賀先輩になんとか応えたが、その言葉すら詰まってしまった。
そんな自分に益々不安になっていると、恒賀先輩はさっきより一段と声を小さくする。
「どうしても緊張するなら、ここにいる人間みんなジャガイモだと思っとき」
「そ、そうですね」
ジャガイモジャガイモジャガイモ…
「…次は風紀委員長から、新入生歓迎会の間の諸注意をお願いします」
―――きたっ!
鳴海先輩に呼ばれ僕はマイクを持ちながら生徒達の前まで行き一礼する。
新入生歓迎会のため一年生しかいないはずだが、それでも前に出ることに慣れていない僕にはこの人数の視線だけでも気が遠くなりそうなほど緊張した。
ジャガイモジャガイモジャガイモジャガイモ…
「ジャガ……。」
―――間違えた!!
顔に一気に熱が集まる。
手足も震え生徒達の顔なんて見れない。
ここからではわからなかったが恒賀先輩が頭を抱えているような気がした。
「………」
自分を落ち着けるために僕はゆっくりと唾を呑み込む。
「……新入生歓迎会中は」
そこからの記憶は、正直残っていなかった。
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