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僕は学食で夕食を食べ終わり寮の部屋でココアを飲んでいた。
寮の部屋は全部二人部屋で共同スペースのリビングとプライベートルームが一部屋ずつ、そして簡易キッチンにバス、トイレがある。
僕は共同スペースのリビングにあるソファーに座りココアをふぅふぅする。

龍音時先輩はまだ帰って来ていない。いつもどこで何をしているのかわからないが、先輩の帰りはだいたい遅かった。
一緒に住み始めて一週間程だがこの部屋で龍音時先輩と顔を合わせたのは数えるほどしかない。


「…今日も遅いのかな、龍音時先輩」


生徒会長と風紀委員長の部屋はこの学園の中でも特に広い。
こんなに広い部屋に一人でいるのは寂しくて心細かった。

風紀委員長になってから教室には行っていない。仕事に追われていてそれどころじゃなかったし、教室に行ってもクラスメートに遠巻きにされるだけのような気がして行きづらかった。
一般の生徒は僕に何か言ってくることこそないが、みんな遠巻きにし冷ややかな視線を送ってくるし、風紀委員の中でもほとんどが僕を風紀委員長と認めていないのが現実だった。

そんなときだからこそ寮で一人でいるのは辛い。
たとえ会話がなくても僕は龍音時先輩に居て欲しかった。


ココアを飲み終わった頃、部屋の扉が開けられる音がする。この部屋はオートロックになっているため龍音時先輩が帰って来たということがすぐにわかった。

龍音時先輩がリビングにやってくる。僕は誰かがここに居てくれるというだけで心が救われる思いがした。
だが先輩は僕をちらりと見るとリビングから続くプライベートルームへと足を向けてしまう。


「…りゅ、龍音時先輩!」


声を絞り出して先輩を引き留めると声が裏返った。
それでも僕はまた一人になりたくなくて必死に言葉を紡いだ。


「お、お帰りなさいっ。今日も遅かったですねっ」
「………」


龍音時先輩は僕をただ見つめるだけで何も言ってくれない。
僕はそれに悲しくなったがそれでもさらに口を開いた。


「…ご飯っ食べたんですか!?」
「………」


やはり何も答えてもらえないのかと僕が顔を俯かせたとき空気が動くのを感じた。


「…どうしたんだよ?」

「………え…?」


顔を上げると龍音時先輩が僕のほうへやって来るところだった。先輩は僕の前まで来るとくしゃりと僕の髪を掻き回す。



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