好き未満 3 「キャー市川くーん!」 「市川様ぁ!」 「樹白くん、がんばってー!」 ゴール真下まで走っていってボールを放つ。 ――シュ〜ト☆ 「キャー!」 「かっこいいー!市川様ぁ!!」 ボールがゴールに吸い込まれて周囲から大きな歓声があがった。 「イェ〜イ☆」 「ナイッシュー、春哉」 順とハイタッチしたところで時間になって試合が終わった。 今日の体育の授業はバスケだ。 体育館内ではそこかしこでバスケの試合が行われていて、靴がこすれる音が響いている。 さっきまでオレらが試合をしていたコートでは次の試合が始まっていた。 「どうしたんだよ、春哉。今日調子いいじゃん」 床に座りこんで服の首元から風をおくる。 「うふふ、今日はイイことがあって機嫌がイイのよ〜」 「いいこと?」 オレは昼休みに副委員長様と遊ぶ約束をしたことを話した。 「……………お前、副委員長と仲よかったっけ」 「ちがうよ〜☆鈴夏が副委員長様と遊びたいって言ってるの〜」 「あぁ、妹関係か」 順は壁に寄りかかると上を仰ぎ見た。 「てかそれって鈴夏ちゃんは副委員長ラブってことか?」 「ちがうよ!ラブじゃなくてライク!むしろラブなんてオレが許しません!」 「………ほんとシスコンだな」 呆れたような目に、少し居心地が悪くなる。 「でもそれならなんで副委員長と遊ぶ約束してるんだよ。よけい鈴夏ちゃんが副委員長のこと好きになるかもしれないだろ」 ―――それは……… 「………………鈴夏が遊びたいっていうから…」 「…………」 聞こえてきた大きなため息にびくびくしながら順を伺う。 「まぁ好きにすれば。でもお前バイトでほとんど休みないんだから、鈴夏ちゃんのお願いだからって無理はするなよ」 「……順」 ―――オレのこと心配してくれたんだ… 優しい微笑みと頭に感じた重みに、オレはうれしくなって笑い返した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |