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好き未満


「キャー市川くーん!」
「市川様ぁ!」
「樹白くん、がんばってー!」

ゴール真下まで走っていってボールを放つ。


――シュ〜ト☆


「キャー!」
「かっこいいー!市川様ぁ!!」

ボールがゴールに吸い込まれて周囲から大きな歓声があがった。

「イェ〜イ☆」
「ナイッシュー、春哉」

順とハイタッチしたところで時間になって試合が終わった。


今日の体育の授業はバスケだ。
体育館内ではそこかしこでバスケの試合が行われていて、靴がこすれる音が響いている。

さっきまでオレらが試合をしていたコートでは次の試合が始まっていた。


「どうしたんだよ、春哉。今日調子いいじゃん」

床に座りこんで服の首元から風をおくる。

「うふふ、今日はイイことがあって機嫌がイイのよ〜」
「いいこと?」

オレは昼休みに副委員長様と遊ぶ約束をしたことを話した。

「……………お前、副委員長と仲よかったっけ」
「ちがうよ〜☆鈴夏が副委員長様と遊びたいって言ってるの〜」
「あぁ、妹関係か」

順は壁に寄りかかると上を仰ぎ見た。

「てかそれって鈴夏ちゃんは副委員長ラブってことか?」
「ちがうよ!ラブじゃなくてライク!むしろラブなんてオレが許しません!」
「………ほんとシスコンだな」

呆れたような目に、少し居心地が悪くなる。

「でもそれならなんで副委員長と遊ぶ約束してるんだよ。よけい鈴夏ちゃんが副委員長のこと好きになるかもしれないだろ」


―――それは………


「………………鈴夏が遊びたいっていうから…」
「…………」

聞こえてきた大きなため息にびくびくしながら順を伺う。

「まぁ好きにすれば。でもお前バイトでほとんど休みないんだから、鈴夏ちゃんのお願いだからって無理はするなよ」
「……順」


―――オレのこと心配してくれたんだ…


優しい微笑みと頭に感じた重みに、オレはうれしくなって笑い返した。



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あきゅろす。
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