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恋は盲目



髪を染めた。

季節に合わせた秋らしい赤色を毛先に入れた。

初めてブリーチをした。

髪が白と金を混ぜたような色になった。

……似合わないと思った。











美容院を出て時計を確認する。
家に帰るにはまだ早すぎる時間。
買い物でもしようか、なんて気にはならず、よく行くカフェに入った。どこにでもあるチェーン店だ。



カフェモカを一つ注文した。
チョコレートの甘い香りが鼻腔をくすぐる。

たまたま空いていた、窓側のソファー席に腰を下ろす。
景色がいいわけではない。

目の前を通り過ぎる人達はみんな、忙しそうに早足で歩いていく。





なんとなく、窓の外を見ていた。
見覚えのある人が、いた。

見覚えのない、女の人を連れて。




わたしにはとても似合わないだろうミニスカートに、ハイヒールを身につけて。

そして、わたしには似合わなかったブリーチの金色が、よく似合っていた。



ドレッドヘアーに、鼻筋の通った高い鼻。トレードマークのサングラスが、本当によく似合う彼は、わたしにはとんでもなく不釣り合いのような気がして。というか、本当に釣り合っていないのだと思うけれど。




彼が知らない女の人を連れて歩く場面を見るのは、もう何度目だろうか。同じ数だけ、問い詰めずに知らないフリをしてきた。



別に良かったのだ。
隣に置いてくれれば、彼が誰と遊ぼうが。

だから、見て見ぬフリをしてきた。
そうしていたら、彼がわたしを捨てることはないだろうと思ったから。




なんて情けないんだろうか、と自分でも呆れるのだ。






通り過ぎる一瞬、彼と目が合った。



それでもわたしはきっと、知らないフリをする。
さもそれが賢い女であるかのように振る舞うのだ。







視線が合った時、彼の目はとても冷たかった。
馬鹿な女を見る目だった。



それでもわたしは、知らないフリをする。



そして彼は、それでもわたしを、とりあえずは側に置いてくれるのだろう。
馬鹿な女だと思いながら、ほんの僅かな優しさを与えてくれるのだ。




わたしはただ、その見せかけのような優しさに甘え続けるのだと思う。








恋は盲目。

わたしたちはお互いに、目を瞑りながら生きているのだ。



相手にも、自分にも。










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