ここぞ、というときに(拍手) ＊
好き、とか
愛してる、とか
言ってほしいようで、でも恥ずかしいからやっぱり言ってくれなくてもよくて。
でも、でもやっぱり、聞きたい言葉で。
ドラマや漫画じゃあ、「愛してる、君を守りたい」なんて陳腐な愛の言葉を恥ずかしげもなく口にして、相手も当然のように受け入れているけれど。
そんな言葉を聞いた日には顔から火が出ると思う。
友達の彼氏は結構、好きだなんだと伝えてくれるらしい。結婚しようね、なんて話もするそうだ。君達、付き合ってどれだけも経ってないでしょうよと。アナタ前の彼ともそんなこと言ってすぐ別れてたじゃないですかと。まぁ落ち着きなさいよと言いたい。
わたしの彼は全く好きとか言わない。全く。
告白された時ですら好きとは言われてない。
それなりに長い期間付き合ってるんだけど。
……だから、なんだかんだ言いつつも、わたしだって好きだとか言われてみたいわけ。
という旨を直接彼にぶつけてみたところ、そんなくだらねーことで悩んでんのか、カスすぎんだろ、と辛辣な一言をいただいた。かいしんのいちげき！わたしのメンタルはひんしだ！
しゅん、と項垂れるわたしの頭に手を乗せ、いいかよく聞け、と阿含が言う。
俺はお前のこと、めちゃくちゃ好きだっつーんだよ。大体、好きだなんだってのはよ、ここぞって時のためにあんまり言わねー方がいいの。好き好き乱発してたら価値がなくなるだろ、分かったかカス。
相変わらず言葉尻は乱暴だけど、十分すぎるほどに伝わりました。だって、あんなに顔が赤いから。
耳まで真っ赤、と笑ったらお前もな、と二人して赤い顔をして笑い合った。
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