[携帯モード] [URL送信]
右肩の刺青 *



「あ゛?

……んだそれ」



刺青か?

ナンパして引っ掛けた女とホテルに行って……確か、ヤッた後そのまま寝て。んで、暑くて目が覚めた。
時計を見るともう明け方だった。

すると女も目を覚ましたようで、体を起こした。暑い、と一言呟いて着ていた黒のTシャツを脱いだ。
恥じらいなのか、一応俺に背を向けていたが、曝け出された右肩に模様があるのが見えた。そして何だ?と問いかけた冒頭に戻る。



「ただの刺青だけど」



だからどうした、と言わんばかりに冷めた口調で返事が返ってくる。
ヤッてる最中は殆ど脱がせなかったもんだから気づかなかった。いや、刺青があろうが無かろうがどうだっていいんだが。



「それ、いつ入れたんだ?」



なんとなく気になって聞いてみる。
見たところ、俺と大して歳は変わらないようだが。



「ハタチ」

「あ゛ー?

お前歳いくつだよ」

「22」



マジか。それなりに年上じゃねぇか。変わらないっつーか、多分年下ぐらいだろうと見積もってたが、まさか22だとは。



「ハタチの誕生日に入れられたの」



誰に、とは聞かなかった。聞かなくてもまぁ、大体分かる。へぇ、と一言だけ返した。



「わたしはシャワー浴びてから帰るから、アンタ先帰っててもいいよ。

あ、ホテル代は別にいらないから」



そう言うと女は俺の答えも聞かずにさっさと風呂場に消えてった。変な奴。

普段の俺ならホテル代なんか出すわけもなく、そんなこと言われるまでもなく払うつもりもない。
だが、まぁ今回は特別だ。妙に興味が湧いた女だったし、俺に媚びることもしなかったし。財布から一万円札を取り出してテーブルに置いておいた。

あ゛ーさっさと帰って風呂に入りてぇ。





ホテルを出ると、太陽が顔を出し始めていた。



あの刺青の模様、どんなのだっけか。ハートだっただろうか。
ハタチの誕生日に入れられたとか言ってたけど。元彼にかそこらだろうな。



朝焼けが眩しくて目を細める。



瞬きと瞬きの間に、あの刺青の模様がちらついて離れない。曖昧だけど、はっきりと。



名前も知らない。
顔の輪郭も、髪の香りも、あまりよく覚えていない。



あの刺青の模様だけが、やけに瞼の裏に焼き付いていた。










とある歌が元ネタ

[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!