サクレ (拍手)* 「あ゛ーーーあちィーーー」 「ほんとになー」 「ちょっとアイス買ってこい」 「いや、阿含買ってきてよ」 「あ゛? さっき俺スマブラで勝っただろ、だから買いにいけ」 「いやいや、そんな勝負してなかったから。 わたしあれがいい、サクレ」 「お前上に乗ってるレモン食う派?」 「食べる食べる、むしろあのレモンが楽しみ」 「だよな、カスなりに分かってるじゃねぇか」 「久しぶりに阿含と気が合った気がする」 「カスには天才の気持ちは分かんねぇからだろ、カスだからよ」 「カスではない。カスの一歩手前かもしれんけどカスではない」 「あ゛ーしゃあねぇ、俺が金出すから買いにいってこい」 「やだよ、じゃあわたしもお金出すから買ってきてよ」 「雲子ちゃんに頼むか」 「でた、都合のいい時だけの雲水頼り。 もうあれだ、一緒に買いに行こ。一緒に暑さを共有しよう。そんでアイスをより美味しく食べよう。うん、そうしよう」 「あ゛ーーーだりィ!!」 「はいはい、行くよー」 夏の暑さを体いっぱいで感じながら、アスファルトの道を歩いていく。冷房の効きすぎたコンビニの店内でサクレを三つ手にとって、支払いをして来た道を帰る。 わたしと阿含と、雲水と。一人ひとつずつのサクレが入ったコンビニの袋を手に下げながら、だらだらと帰るのも、悪くないなんて。 雲水の分は冷凍庫へと片付けて、溶け始めたサクレを二人で食べる。レモンをかじって酸っぱいねって笑って。たまに頭がキーンとなったりして。 そんなくだらないことが無性に幸せに感じた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |