幻愛夜想曲
9
それどころか車も動いており、喋りながら歩いている姿も見える。
どうやら、この空間だけ時が止まっているらしかった。
音ひとつたたない、しんとした静けさに逆に耳が痛くなる。
(…一体何なの?この空間だけ時が止まっている――…もしかして)
冷静に考えていると、昼間の話が思い出された。
――空間制御能力
(きっとそうだ)
その能力者が起こしているに違いない。
どさっ
不意に周りの喧騒が蘇り、人々は自由に動き始めた。
突然、まるで水中から出たときのように耳に音が入る。
手に力を入れていなかったため、唐突に戻った時の流れにレジ袋を落としてしまっていた。
しかしそんなことには構わない。
(…能力を使った人がまだ近くにいるかもしれない)
捜し出すために駆け出そうとした時、不意に腕を掴まれた。
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